第62回日本鼻科学会学会賞受賞　快適な呼吸と豊かな香りのある生活のために～慢性鼻副鼻腔炎による嗅覚障害と小児の嗅覚に注目して～

新型コロナウイルス感染症の感染拡大がきっかけで、「嗅覚障害」は一般人のみならず、多くの分野の研究者達からも注目されるに至った。嗅覚障害を来す疾患発見の遅延や、本領域の発展停滞による患者や社会への影響は計り知れない。しかしながら「嗅覚障害」は、他の感覚器と比較すると、診断治療の選択肢や、嗅覚障害患者への社会的支援・啓発活動も圧倒的に少なく、診療上の課題はまだ多く存在している。筆者は当院において、2009年に開設した嗅覚専門外来を通して、嗅覚障害の主な原因疾患である、慢性鼻副鼻腔炎による嗅覚障害の病態を把握し、治療成績向上に繋げていくこと、そして小児嗅覚分野のエビデンスを構築し、適切な評価や治療を先導していくことに注力してきた。その一連の功績を認めていただき、本賞を受賞するに至った。本稿ではその概要を示す。