まず初めに，4月に事故で急逝されたMark Wainberg先生に追悼の意を表したい。
Wainberg先生は，抗ウイルス薬の研究でご高名なばかりでなく，International AIDS Society（IAS）の運営委員会委員や，1998～2000年にはPresidentとして途上国への抗ウイルス薬アクセスの拡大など，IASの活動の中心人物として貢献された。日本の研究者との交流も深く，お招きするといつも喜んで来日してくださり，その都度研究面で大変刺激を受け勉強になるとともに，その天性の温かい人柄にふれ，多くの若い研究者が大いに励まされたことが思い返される。長年のご貢献に感謝するとともに心よりご冥福をお祈りしたい。
IAS 2017はパリで華やかに開催された。おりしもツールドフランスの最終日と重なり，学会場近くの凱旋門付近は多くの人であふれていた。この会議はIASが国際AIDS会議を隔年開催とした後，HIV感染症の病態と治療・予防に関する研究推進のために企画した会議である。今年は8,000人近い参加者を得て，学会は盛会であった。以下，Future Perfect，Track A（基礎研究），Track B（臨床研究），Track C（感染予防研究），Track D（実装科学）に関して，それぞれトピックと概説を試みる。