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M-Review

【特集 禁煙指導のUp-To-Date―どのように達成させるか―】

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掲載誌
THE LUNG perspectives Vol.21 No.1 14, 2013
著者名
木田 厚瑞
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器 / 呼吸器 / 脳血管障害 / 癌
診療科目
一般内科 / 循環器内科 / 呼吸器内科 / 神経内科 / 腫瘍内科 / 老年科
媒体
THE LUNG perspectives

喫煙被害で死亡する総数は毎年, 全世界で500万人に達し, 画期的な禁煙政策が軌道に乗らなければ今世紀中にその総数は10億人を越えるといわれている. 先進国の中では最悪の喫煙率の高さだといわれているわが国にとって今こそが正念場といえよう. 喫煙が健康に多大の被害を与えることに先駆的な情報を伝えたのはSir Richard Doll(1912~2005年)であった. 生きておれば昨年, 2012年には100歳の誕生日を迎えたはずだった. 現在に至る禁煙運動の展開は彼の生涯をかけた行動を抜きに語ることはできない. その啓蒙活動は1,000万人の命を救ったといわれ, US surgeon generalは「医科学の研究史において疾患との因果関係を明確に証明しえた他に例をみない優れた業績」と讃えている. その功績により英国政府よりナイト爵位が贈られた. 最近, 2つの欧米雑誌が相次いでDollの功績を讃えている1)2). Dollは医師の家族に生まれ, 英国ケンブリッジ大学を卒業し, ロンドンのSt.Thomas病院でトレーニングを受けた後, 第2次世界大戦に従軍, 退役後はMedical Research Councilで働いていた. そこで出会ったBradford Hillの指導の下, 肺がんの原因について疫学的な手法を用いて調査を始めたのが出発点であった. 疫学統計の手法はもちろん確立されていない時代である. Dollが最初に行ったのは肺がん患者700人の1人ひとりに面接, 詳細な聞き取り調査を行うことだった. 「自分は考えつくありとあらゆることを尋ねました. しかしすぐにタバコが原因であるという結論に行きつきました」. その頃は医師の80%が喫煙者であり, 彼も喫煙者だったがその結果をみてすぐに禁煙した. 1950年, Dollの最初の短い論文が発表された. また, 英国医師4万人に喫煙や他の生活習慣のアンケートを重ね調査を進めた. この研究でもわずか3年間で肺がんはタバコが原因であるという結論に達した. さらに冠動脈疾患も喫煙に関わっていることを明らかにした. こうして, 以来50年間にDollは約600編の論文を書いた. 最後の論文は92歳の年であり, この年に彼は13編の論文を発表している. 死因は心筋梗塞であったが研究室での死であった. Dollは学者として象牙の塔にこもっていたのではなかった. 当初, 研究者は社会的運動に巻き込まれるべきではないと考えていたがやがてそれは誤りであると自覚し, 禁煙運動の先頭に立って行動した. 1978年, タバコ増税こそが禁煙に有効な政策であることを, 英国大蔵大臣に直言している. また, さまざまな会議, 講演会, メデイアを通じて禁煙の重要さを訴え続けた. 1963年, Dollが語ったこととして, 「自分が幸運だったのは医師になりたての頃プライマリケア医として患者に接する機会を持ったことだった. 恩師は臨床研究の大切さ, 面白さをくり返し説明してくれ, 研究の方法も統計処理さえも知らなかった自分を辛抱強く育ててくれた」と, 恩師Bradford Hillに感謝している. 他方, Hillは, 「将来を見据えた見識と経験により医学統計を幅のある研究領域に高めた優れた研究者である」と, Dollの功績を讃えている. Dollの行動と彼を育てたHillとの子弟愛がなければ今日の禁煙運動の展開はかなり遅れたか, 形の変わったものになったに違いない.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

掲載誌の紹介

THE LUNG perspectives2013年冬号(Vol.21 No.1)

肺は代謝・生理・免疫など機能面においても,疾患の原因・病態・診断・治療など臨床面においても,他に類を見ない多様性を持つ。

本誌は成長・加齢に深く関わる気管支喘息・肺気腫・感染症・呼吸不全・肺癌などの疾患を対象に,分子生物学・生理学・形態学・生化学・免疫学などの広い視野から病因・病態・治療を捉える。最新の知見と,基礎的・古典的知識の双方を踏まえた新鮮で正確な情報を提供。

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