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胃癌診療の歴史

第5回 ビルロートの胃癌切除術[1]―手術成功と再発の狭間で

岡島邦雄

胃がんperspective Vol.2 No.4, 51-58, 2009

Billrothとその一門は, これまでの連載で述べたごとく総力を挙げて胃癌の手術の準備を進めてきた. すなわち, 胃癌患者の解剖例の所見の集積と分析, 動物の胃切除実験, 胃瘻の治療, 腸管の吻合, 縫合糸の問題などを検討し, 胃癌に対する胃切除, とくに幽門切除の準備を進め, 適応症例の出現を辛抱強く待っていた. そして1881年, 1人の患者が内科のBreuer医師より弟子のWolferに紹介され来院した. いよいよ胃癌切除術への挑戦である. しかしそれは「はたして胃癌切除は正当な手術であるのか」という疑念がつきまとう, 苦しい挑戦であった. 『1 第1例:43歳女性, 生存期間115日』 患者は43歳の女性. 出産歴10回, 子供8人健存, 左乳房の化膿性乳腺炎の既往あり. 3ヵ月前(1880年10月頃)から嘔吐が始まり, タール便もあり, 臍部に硬い可動性の腫瘤が触れた. 貧血は高度で, 皮膚は乾燥し, 蒼白. 下腹部陥凹し, 腹水なく, 臍の右方に腫瘤がみえ, 触診で硬く, 可動性あり.

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