論文・記事一覧
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 27-34, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
大腸SM癌に対する内視鏡治療
田中 信治 / 岡志郎 / 金尾浩幸 / 平田真由子 / 金子巌 / 茶山一彰
「Summary」大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応の原則は, リンパ節転移の可能性がほとんどないことである. 実際には, SM癌の確診には摘除標本の病理診断が必要であり, 腫瘍が一括切除できる大きさと部位になくてはならない. 術前に病変の大きさ, 予測深達度, 組織型に関する情報は必須である. なお, 大腸には腺腫性病変が多く, 腺腫, 腺腫内癌, 腺腫成分を伴わない癌を術前に鑑別することが治療手技選択においてきわめて重要である. 具体的な大腸内視鏡的切除の適応条件は大腸癌治療ガイドラインによると, (1)粘膜下層への軽度浸潤までの早期癌, (2)最大径2cm未満, (3)肉眼型は問わない, の3点である. この条件の中で, 最大径2cm未満を原則とした理由は, スネアEMRで一括切除できる大きさが平均2cm程度であることに基づいている. 術前の診断精度の限界を考慮すると, 内視鏡治療に際しては切除標本の緻密な組織学的検索が必須であり, 一括切除が原則だからである. なお, 径2cm以上の病変に対しては, 病変の臨床病理学的特性と術者の技術レベルに応じて, 分割EMR(EPMR), ESD, 外科的切除などを適切に選択する.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 21-26, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
【特別寄稿】大腸SM癌のピット診断とその課題
工藤進英 / 細谷寿久 / 池原伸直 / 蟹江浩 / 樫田博史
「はじめに」大腸SM癌の治療適応については, これまでの症例の蓄積およびその詳細な臨床病理学的な検討により, 一定のコンセンサスが得られている. SM微小浸潤癌では転移の可能性はないとされ, 内視鏡的切除の適応である. それに対しSM深部浸潤癌ではリンパ節転移の可能性があるため, リンパ節郭清を伴う外科的切除の適応となる. それゆえ, 適切な治療方針を決定するためには, より正確な術前診断が必要となる. 当施設では大腸病変においては, 拡大内視鏡観察を行い, pit pattern診断を中心とした質的診断により治療方針を決定している. pit patternについては, 大腸粘膜において腺窩(crypt, gland)の開口部をpit(腺口)と呼び, 粘膜表面からみたpitの形態や配列をpit pattern(腺口構造)とする. 1993年にわれわれがオリンパス社と共同で開発したズーム式拡大電子スコープCF-200Zの登場により, 大腸腫瘍に対して100倍の拡大像が瞬時に得られるようになった.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 18-20, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
総論
武藤徹一郎
「Summary」大腸SM癌の治療は, polypectomyが日常診療に登場した1970年代の前と後に大別される. 前期の対象は直腸病変に対する外科的局所切除で, St.Mark's病院の外科医たちが得意技としていた. この時期にすでに転移のrisk factorが論じられている. polypectomyが登場してからSM癌の症例が飛躍的に増加し, risk factorの重要性がさらに増した. EMR, ESDの登場によってSM癌の内視鏡的治療の重要性が指摘され, 日常診療において確たる地位を築いている. 従来, 摘除してからrisk factorを検索するという方針が一般的であったが, 最近では, 摘除前にrisk factorの有無を診断して内視鏡的処置の適応を決定しようという努力がなされている. 確診率がどれ位か, 専門家だけでなく一般レベルでも活用可能か否かは, 今後に残された課題であろう. 「治療の歴史」大腸SM癌の治療の歴史は内視鏡的摘除術(polypectomy)登場の前と後に2大別される.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 80-81, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
No.2 大腸癌取扱い規約による病期分類とDukes分類,TNM分類との違いを教えて下さい.
問山 裕二 / 井上 靖浩 / 三木 誓雄 / 楠 正人
「Answer」大腸癌の病期は, 深達度, リンパ節転移, 遠隔転移の3つの予後規定因子により分類されます. 大腸癌取扱い規約は, これにさらに病期による治療法を加えてある点が異なります. 「大腸癌の病期分類」大腸癌の病期分類は, 臨床所見あるいは病理組織学的所見によって評価された癌の進行度を分類し, 患者の治療方針を決定する際の指標となるものです. したがってその分類は, 患者の予後を客観的に, より正確に予測できるものでなければなりません. 一方で, 癌の予後をより個別化し, 正確なものとするためには, 検討される項目は必然的に多くならざるをえませんが, 世界的に広く用いられる分類にするには, 普遍的かつ必要最小限の因子で有効性が検証できるものが求められます. その観点から1932年にDukesは, 進行度分類を病期分類のシステムとして確立し, Dukes分類として報告しました1). Dukes分類は, 基本的にリンパ節転移の有無で大別し, さらにリンパ節転移のない病変を癌の浸潤が固有筋層を超えるか否かで分類したものです.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 78-79, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
No.1 大腸癌は遺伝しますか?
冨田 尚裕
「Answer」大腸癌のうち約20%に何らかの遺伝要因の関与が考えられていますが, FAPやHNPCCなど常染色体優性遺伝形式の明らかな“遺伝性大腸癌”は, 全大腸癌の中で1~5%と推測されています. 「大腸発癌における遺伝要因」すべてのがん発生と同様, 大腸癌の発生にも遺伝要因と環境要因の2つが関与しています. 大腸癌の場合, 図に示すように, 全体の約20%といった多くの癌発生に, 何らかの遺伝要因が関与するであろうと推測されています. その他の80%がいわゆる散発性のもので, 食事・運動その他の環境要因が主因であると考えられるものです. 何らかの遺伝要因の関与が推測されるものの中には, 大きく分けて2つのentityが含まれます. すなわち, きわめて遺伝要因が強い, いわゆる“遺伝性大腸癌”と呼ばれるもので, 大腸癌発生の分子機構における重要な遺伝子にもともと病的変異を有しており, それが遺伝することによって, 高率に大腸癌を発生するものです.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 72-77, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
世界をリードするわが国の大腸学
武藤徹一郎 / 杉原 健一
「世界をリードするわが国の大腸学~発展の軌跡と次世代へのメッセージ~」1970年代初頭まで, 大腸疾患は医学界においてマイナーな分野であり, 専門家と呼べる研究者も臨床家も稀有であった. それからわずか30余年. 大腸癌の罹患率・死亡率は上昇を続け, それと時を同じくして, わが国の消化器研究・治療は世界をリードするまでに発展した. 今やcommon diseaseといえる大腸疾患だが, 研究・治療の進歩とは裏腹に, 適切な検診・治療体制の整備の遅れが指摘されている. わが国の大腸疾患の礎を築き, 大腸疾患のみならず日本の新しいがん治療体制の創出に取り組む癌研究会有明病院院長の武藤徹一郎氏に, わが国の大腸疾患研究・治療の歩みを振り返るとともに, 今後の課題を聞いた. 「杉原」本誌創刊号の対談企画に当たって, わが国の大腸疾患の研究・治療のパイオニアである武藤先生にお話をお伺いします. まずは, 外科医を志したきっかけ, 外科医の研究として病理を選択した理由, 当初, 胃の研究をされていた先生が大腸の研究に没頭されるようになった経緯についてなどからお話しいただけますでしょうか.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 61-65, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
大腸癌手術後のサーベイランス
石黒 めぐみ / 小林 宏寿 / 望月英隆 / 杉原 健一
「Summary」大腸癌治癒切除後の再発率は約17%で, その約80%が術後3年以内に出現する. 大腸癌術後の再発を早期に発見し, 再発巣の治癒切除が行われれば, 約40%の5年生存率が期待できるため, 適切な術後サーベイランスが必要である. 大腸癌術後のサーベイランス法については, その検査法や間隔, 予後改善効果, 費用対効果比など, 明確なエビデンスはなく一定の見解が得られていないが, 多数の再発例のretrospectiveな検討から, 再発の特徴を把握し, 再発高危険群・低危険群の分別を行うことで, より効率的なサーベイランス法を計画できる可能性がある. 「はじめに-サーベイランスの意義-」わが国での大腸癌の治療成績は, 治癒切除後の5年生存率約80%と高い水準を示しているが, 一方で約20%に再発をきたしている現状がある. しかし, 再発巣を切除可能な状態で発見することができれば, 予後の改善につながる可能性は高い1-4).
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 56-60, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
緩和医療
首藤真理子
「Summary」緩和ケアはがん末期だけに限定されたものではなく, がんと診断されたときから開始されるべき全人的ケアである. がん性疼痛はがん患者が訴える症状の中で最も頻度が高く, 約80%に認められる. WHO方式がん疼痛治療法を用いれば, 約80%の患者の痛みを軽減できるといわれている. 進行・再発大腸癌の患者では, 経口摂取が困難となることが多いため, 経口摂取困難時の薬剤の投与経路の変更方法について述べる. また, 消化管閉塞に伴う症状は, 従来の薬物療法のみでは治療に難渋することが多いとされるが, ソマトスタチンアナログ製剤であるオクトレオチドが有効な場合がある. 「がん診療における緩和医療の意義」WHOによると, 「緩和医療とは, 生命にかかわる疾病に直面している患者と家族の痛みやその他の身体的, 心理社会的, スピリチュアルな問題を予防・評価・対応することによってQOLを向上させるアプローチである」と定義される1). がん患者は, その人らしく生きる過程を障害するさまざまな苦痛(全人的苦痛, 図1)をかかえている2).
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 50-55, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
大腸癌における放射線療法の役割
櫻井英幸 / 中野隆史
「Summary」大腸癌に対する放射線療法の役割は, 進行下部直腸癌に対する周術期放射線療法と, 対症的(緩和的)放射線療法に大別される. 進行下部直腸癌に対する周術期放射線療法は, 最近では術前化学放射線療法が主体となっている. 局所再発の抑制効果は明らかであるが, 肛門温存, 生存率の向上をはかれるか否かについては, 今後の臨床試験の結果が待たれる. 術前照射例の肛門温存率の向上と肛門機能の温存の関係についても, 詳細なQOLの調査が必要である. 化学放射線療法における照射方法は, 腫瘍および直腸間膜, 仙骨前面, 側方リンパ節を標的とし, 3または4門照射法で, CTを用いた治療計画が推奨される. 直腸癌の局所再発に対しては, 通常のX線の効果は不十分であり, 今後は重粒子線治療が有望である. また, 放射線療法は骨転移などの症例に対して, 速やかな症状の改善が期待できる有効な対症療法である.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 44-49, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
化学療法
山﨑健太郎 / 朴 成和
「Summary」大腸癌における化学療法には切除不能転移・再発例に対する緩和化学療法, および根治切除症例に対する補助化学療法の2つの役割がある. 現在の大腸癌治療ガイドラインが発表されてから変わった状況は, 切除不能・再発大腸癌に対して分子標的治療薬であるbevacizumabが, 補助化学療法に対してFU系経口抗癌剤の一つであるcapecitabineが承認されたことの2点である. 2005年にわが国ではじめて大腸癌治療ガイドラインが作成され, 今後新たなevidenceを柔軟に取り入れ, 逐次改定されると思われるが, 近年, 欧米を中心に分子標的治療薬を含めた新規抗癌剤の開発はめざましく, 改訂作業が遅れているといわざるをえない. 大腸癌治療ガイドラインの出版とは別に, できれば新たなエビデンスが発表されるごと, 遅くとも国内での新薬承認ごとなどに, Webを用いてUp Dateを公表するなど, 改善が望まれる.