【特集 緩和医療:現状と課題】
特集にあたって
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- 掲載誌
- Pharma Medica Vol.31 No.2 7-8, 2013
- 著者名
- 東口高志
- 記事体裁
- 抄録
- 疾患領域
- 癌
- 診療科目
- 腫瘍内科 / 麻酔科
- 媒体
- Pharma Medica
わが国のがんによる死亡は, 年間30万人を超え, 現在死因の第1位を占めており, 今後も増加の一途を辿ると考えられる. このようななか, がん治療の環境整備が叫ばれ, 2006年にわが国ではじめてのがん患者およびがん治療に関する法律である「がん対策基本法」が制定された. 注目すべきことは, その基本理念として, (1)がんに対する研究の推進, (2)がん医療の均てん化の促進に加えて, (3)がん患者の意向を十分に尊重したがん医療提供体制の整備, が盛り込まれたことであろう. すなわち, がん治療において治癒や根治を求めるだけの医療から, がん患者の立場からみた全人的な医療を確立することにも重きを置いた, いわば最先進がん治療への序章を告げるものである. しかし, これはさほど難しいことではなく, もう一度周りを見渡すことから始めればよい. 外科治療, 化学療法, 放射線療法などは, いずれも少なからずの生体侵襲を伴っており, そのことは誰でも理解できることである. そのために発症する副作用や有害事象によって医原性の種々の障害を引き起こす可能性があり, なかでも代謝・栄養学的障害は, 免疫能の低下や臓器障害を惹起することにつながり, 結果として治療への耐用性を低下させる. さらに終末期になると悪液質を発症し, これにはさらに詳細な代謝栄養管理が必要とされ, 精神的な負担も著しく増大する. したがって, がん患者の治療に際しては, たとえ根治的治療が困難ながん患者であろうとも, がん以外の健常な生体機能の向上に努め, 精神的ケアにも十分な配慮を行って, 身体(からだ)と精神(こころ)にも優しいがん治療を早い時期から開始することが大切である. また, がん治療のアウトカムも自ずと変わり, 単純に延命や生存率を重視した医療から, 患者個々の生活の質の維持・向上やその結果もたらされる幸せな人生を重視したものへと改変されつつある. 要するに, わが国のがん治療の形が今, 変わろうとしている. そこで本特集ではわが国の緩和医療の現状と課題をもう一度振り返り, 実際の医療の現場で, 何を求め, 何を実践すればよいかを一緒に考えてみたいと思う. まず, わが国の緩和医療の父とも称される柏木哲夫先生に(1)歴史を, 次いで厚生労働省の山下公太郎先生には(2)社会のニーズを見据えて, 藤田保健衛生大学の伊藤彰博先生には(3)緩和ケア病棟, はしづめクリニックの橋爪隆弘先生には(4)緩和ケアチームについて, また医療連携として長尾クリニックの長尾和宏先生には(5)在宅緩和ケアを, 株式会社仙台調剤の川村和美先生には(6)地域連携について, さらに京都府立医科大学の細川豊史先生には(7)医師からみた緩和ケアを, 明治薬科大学の加賀谷肇先生には(8)薬剤師からみた緩和ケアをご執筆いただいた. 細川, 加賀谷の両先生はそれぞれ現在, 日本緩和医療学会, 日本緩和医療薬学会の理事長をお務めになられており, 緩和医療を支える医療人を育てる立場からも貴重なご意見を賜ることができた. そして, 最後に厚生労働省保険局診療課で2012年度診療報酬改定に深く関わられた現環境省の前田彰久先生に, 診療報酬からみた将来構想を語っていただくことができた. 今回の特集をお読みになられて, 少しでもわが国の緩和医療の現状と問題点がご理解いただければ幸いである. しかし, もう一歩踏み込んで, わが国のがん治療, あるいは医療全般の将来に向かっての方向性を垣間みていただければこの上のない喜びである.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。
