前号まで  慢性疼痛は長年の謎であったが,fMRI(functional magnetic resonance imaging)やPET(positron emission tomography)など機能的脳画像法の進歩によって謎解きの段階に入った.その焦点のひとつとして,大脳基底核・辺縁系の神経核の機能とdopamine 代謝の関係に注目が集まっている.「快の情動系」,「報酬回路」として知られるmesolimbic dopamine system が,「快」だけでなく痛みの制御も操ることがわかってきたからである.体に痛み刺激が加わると,中脳の腹側被蓋野から側坐核(腹側線条体)に向けてdopamine が放出され,中枢性鎮痛機構が働いて痛みを抑える.pain-induced analgesia(痛み誘発鎮痛)の機序にも,dopamine system とopioid system が関与していることが検証されている.