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アンチエイジングからスタチンを考える

骨年齢に対するアンチエイジング─スタチンと骨代謝─

志水秀郎中神啓徳森下竜一

Anti-aging Science Vol.3 No.2, 24-29, 2011

はじめに
 高齢化社会においては,種々の疾患が複雑に絡み合って病態が多様化しており,病因背景を共有して病態が相互に影響を及ぼしあっている場合も少なくない.高血圧,糖尿病,脂質異常症(高脂血症)などのメタボリック症候群が骨代謝に直接的,間接的に影響を及ぼし,骨折頻度を上昇させたり骨粗鬆症を誘発,増悪させることが報告されている.また一部の降圧剤はそれぞれ異なる機構により骨形成と骨吸収のバランスを改善させて,骨折や骨粗鬆症を改善していることもわかってきている.高血圧,レニン・アンジオテンシン系と骨代謝との相関関係については,本誌特集号:アンチエイジング薬としてのARB,「ARBによる骨年齢改善」(Anti-aging Science 2(2):24-30, 2010)を参照していただき,今回はスタチンに注目して,脂質代謝の側面から骨代謝の相関関係を解説していきたい.

Key Words
●スタチン ●骨代謝 ●骨粗鬆症 ●骨芽細胞 ●破骨細胞

はじめに(続き)

スタチンにはLDL-C 低下作用以外にも,コレステロール低下に依存しない多面的な効果(pleiotropic effect)が報告され,抗炎症,免疫抑制,抗血栓作用などを有していることが報告されてきている1).スタチンによる心血管イベントの抑制は,LDL-C 低下作用だけでなく,これらの多面的効果を介していると考えられ,骨代謝においても同様の効果が検証されてきている(図1).

Ⅰ スタチンとBMP-2

 骨代謝は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスによって成立しており,骨量増加をもたらす因子としては大きく2群に分けることができる.すなわち骨芽細胞に作用してその分化成熟を促進して骨形成を促進するものと,破骨細胞に作用して骨吸収を抑制するものである.前者には骨形成因子(bone morphogenetic protein:BMP),インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor:IGF-1),トランスフォーミング成長因子b(transforming growth factor:TGFb),線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor:FGFやエストロゲン,後者には骨粗鬆症治療薬としてカルシトニンやビスホスホネートなどが挙げられる.
 BMP は未分化な間葉系幹細胞を骨芽細胞へ分化させ骨形成を促進する一方で,筋肉への分化を抑制する.BMP は骨芽細胞の受容体に結合した後,シグナル伝達分子であるSmad がRunx2/Cbfa1 と結合し,標的遺伝子の転写を調節すると考えられる.BMP のうち,BMP-2,BMP-4,BMP-6,BMP-7 は骨芽細胞の分化や骨形成を促進することが報告されている.
 動物実験でスタチンの骨量増加作用を報告した論文が,1999年に『Science』誌に掲載されて以来,スタチンは有力な骨粗鬆症治療薬として脚光を浴びてきた2).MundyらのグループはBMP-2 のプロモーター活性を指標にスクリーニングを行い,脂溶性スタチンがBMP-2活性を上昇させるということを見出した.そしてマウスやラットを用いた研究から,スタチンがin vitroにおいて骨形成を促進するのみならずin vivo においても骨量を増加したり,骨粗鬆症モデルで骨吸収を抑制することが明らかになった2).これらスタチンの作用は脂溶性スタチンでは認められるものの,水溶性スタチンでは認められず,スタチンが細胞膜を通過して直接作用することにより発揮されるものと考えられている.BMP-2と3-hydroxy- 3-methyl-glutaryl CoA(HMG-CoA)還元酵素阻害活性との間に相関が認められることや,これらの実験系にメバロン酸やイソプレノイドのゲラニルゲラニルピロホスフェート(geranylgeranyl pyrophosphate:GGPP)を添加するとBMP-2を介するスタチンの効果が抑制されることから,その骨形成促進作用はメバロン酸代謝を阻害することによると推定される.

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