論文・記事一覧
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 78-79, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
No.1 大腸癌は遺伝しますか?
冨田 尚裕
「Answer」大腸癌のうち約20%に何らかの遺伝要因の関与が考えられていますが, FAPやHNPCCなど常染色体優性遺伝形式の明らかな“遺伝性大腸癌”は, 全大腸癌の中で1~5%と推測されています. 「大腸発癌における遺伝要因」すべてのがん発生と同様, 大腸癌の発生にも遺伝要因と環境要因の2つが関与しています. 大腸癌の場合, 図に示すように, 全体の約20%といった多くの癌発生に, 何らかの遺伝要因が関与するであろうと推測されています. その他の80%がいわゆる散発性のもので, 食事・運動その他の環境要因が主因であると考えられるものです. 何らかの遺伝要因の関与が推測されるものの中には, 大きく分けて2つのentityが含まれます. すなわち, きわめて遺伝要因が強い, いわゆる“遺伝性大腸癌”と呼ばれるもので, 大腸癌発生の分子機構における重要な遺伝子にもともと病的変異を有しており, それが遺伝することによって, 高率に大腸癌を発生するものです.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.1 80-81, 2008より
【特集 大腸癌治療ガイドラインをめぐって】
No.2 大腸癌取扱い規約による病期分類とDukes分類,TNM分類との違いを教えて下さい.
問山 裕二 / 井上 靖浩 / 三木 誓雄 / 楠 正人
「Answer」大腸癌の病期は, 深達度, リンパ節転移, 遠隔転移の3つの予後規定因子により分類されます. 大腸癌取扱い規約は, これにさらに病期による治療法を加えてある点が異なります. 「大腸癌の病期分類」大腸癌の病期分類は, 臨床所見あるいは病理組織学的所見によって評価された癌の進行度を分類し, 患者の治療方針を決定する際の指標となるものです. したがってその分類は, 患者の予後を客観的に, より正確に予測できるものでなければなりません. 一方で, 癌の予後をより個別化し, 正確なものとするためには, 検討される項目は必然的に多くならざるをえませんが, 世界的に広く用いられる分類にするには, 普遍的かつ必要最小限の因子で有効性が検証できるものが求められます. その観点から1932年にDukesは, 進行度分類を病期分類のシステムとして確立し, Dukes分類として報告しました1). Dukes分類は, 基本的にリンパ節転移の有無で大別し, さらにリンパ節転移のない病変を癌の浸潤が固有筋層を超えるか否かで分類したものです.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 18-20, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
総論
武藤徹一郎
「Summary」大腸SM癌の治療は, polypectomyが日常診療に登場した1970年代の前と後に大別される. 前期の対象は直腸病変に対する外科的局所切除で, St.Mark's病院の外科医たちが得意技としていた. この時期にすでに転移のrisk factorが論じられている. polypectomyが登場してからSM癌の症例が飛躍的に増加し, risk factorの重要性がさらに増した. EMR, ESDの登場によってSM癌の内視鏡的治療の重要性が指摘され, 日常診療において確たる地位を築いている. 従来, 摘除してからrisk factorを検索するという方針が一般的であったが, 最近では, 摘除前にrisk factorの有無を診断して内視鏡的処置の適応を決定しようという努力がなされている. 確診率がどれ位か, 専門家だけでなく一般レベルでも活用可能か否かは, 今後に残された課題であろう. 「治療の歴史」大腸SM癌の治療の歴史は内視鏡的摘除術(polypectomy)登場の前と後に2大別される.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 21-26, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
【特別寄稿】大腸SM癌のピット診断とその課題
工藤進英 / 細谷寿久 / 池原伸直 / 蟹江浩 / 樫田博史
「はじめに」大腸SM癌の治療適応については, これまでの症例の蓄積およびその詳細な臨床病理学的な検討により, 一定のコンセンサスが得られている. SM微小浸潤癌では転移の可能性はないとされ, 内視鏡的切除の適応である. それに対しSM深部浸潤癌ではリンパ節転移の可能性があるため, リンパ節郭清を伴う外科的切除の適応となる. それゆえ, 適切な治療方針を決定するためには, より正確な術前診断が必要となる. 当施設では大腸病変においては, 拡大内視鏡観察を行い, pit pattern診断を中心とした質的診断により治療方針を決定している. pit patternについては, 大腸粘膜において腺窩(crypt, gland)の開口部をpit(腺口)と呼び, 粘膜表面からみたpitの形態や配列をpit pattern(腺口構造)とする. 1993年にわれわれがオリンパス社と共同で開発したズーム式拡大電子スコープCF-200Zの登場により, 大腸腫瘍に対して100倍の拡大像が瞬時に得られるようになった.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 27-34, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
大腸SM癌に対する内視鏡治療
田中 信治 / 岡志郎 / 金尾浩幸 / 平田真由子 / 金子巌 / 茶山一彰
「Summary」大腸SM癌に対する内視鏡治療の適応の原則は, リンパ節転移の可能性がほとんどないことである. 実際には, SM癌の確診には摘除標本の病理診断が必要であり, 腫瘍が一括切除できる大きさと部位になくてはならない. 術前に病変の大きさ, 予測深達度, 組織型に関する情報は必須である. なお, 大腸には腺腫性病変が多く, 腺腫, 腺腫内癌, 腺腫成分を伴わない癌を術前に鑑別することが治療手技選択においてきわめて重要である. 具体的な大腸内視鏡的切除の適応条件は大腸癌治療ガイドラインによると, (1)粘膜下層への軽度浸潤までの早期癌, (2)最大径2cm未満, (3)肉眼型は問わない, の3点である. この条件の中で, 最大径2cm未満を原則とした理由は, スネアEMRで一括切除できる大きさが平均2cm程度であることに基づいている. 術前の診断精度の限界を考慮すると, 内視鏡治療に際しては切除標本の緻密な組織学的検索が必須であり, 一括切除が原則だからである. なお, 径2cm以上の病変に対しては, 病変の臨床病理学的特性と術者の技術レベルに応じて, 分割EMR(EPMR), ESD, 外科的切除などを適切に選択する.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 35-39, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
大腸SM癌の内視鏡的切除後の根治度判定
山岸秀嗣 / 福井広一 / 加藤洋 / 藤盛 孝博
「Summary」内視鏡診断・治療技術がめまぐるしく進歩している. それによって, 早期大腸癌の検出がより可能となり, pSM癌においても内視鏡治療の適応であると考えられ, 大腸癌研究会を中心にpSM癌の取り扱い方について論議がなされてきた. 『sm癌取扱いプロジェクト委員会』から, SM浸潤距離1,000μm以深への浸潤がリンパ節転移を予測する危険因子の一つであることが報告された. また, SM浸潤距離に簇出のデータを加えることで, さらにリンパ節転移を予測する精度を向上させることが示された. しかし, 内視鏡医による肉眼診断や病理医による組織診断はさまざまであるため, 早急な均てん化が必要である. 「はじめに」近年, 内視鏡診断・治療の進歩により, 早期大腸癌の検出がより可能になってきた. そのため, 元来は外科的切除が必要であった大腸pSM癌においても, かなりの症例で内視鏡治療の適応が可能であるとの議論が起きている. 現在, pSM癌の取り扱い方についての治療戦略におけるコンセンサスを確立するため, 大腸癌研究会を中心に検討されている.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 44-48, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
直腸SM癌の治療方針
渡邉 聡明
「Summary」直腸SM癌の治療では, 局所切除術あるいは腸管切除術が行われる. 局所切除術には, 内視鏡的摘除術と外科的局所切除術がある. 外科的局所切除術は, 経肛門的切除術, 経仙骨的切除術, 経括約筋的切除術があるが, 近年はTEM, MITASなどの術式が行われ, 経仙骨的, 経括約筋的切除術の適応が縮小している. リンパ節転移が疑われる場合には, リンパ節郭清を伴った腸管切除術が行われる. 適応となる術式は, 吻合を行う場合から, 永久人工肛門を造設する腹会陰式直腸切断術までさまざまである. 近年はintersphincteric resection(ISR)を行う施設が増えており, 永久人工肛門を回避する努力が払われている. 「はじめに」直腸pSM癌(SM癌)にはリンパ節転移のリスクがあり, 腫瘍が局所的に完全に切除されても, 病変によってはリンパ節郭清を伴った腸切除が必要となる. また, SM層への深部浸潤が疑われる症例では最初から外科治療の適応となる. 外科治療では, 内視鏡的治療が可能な場合から, 腸管切除術を必要とする場合, さらには永久人工肛門の造設が必要となる場合まで, 病変によりきわめて治療法が異なる点が特徴である.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 49-53, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
大腸SM癌のリンパ節転移・遠隔転移と予後
斉藤裕輔 / 垂石正樹 / 藤谷幹浩 / 稲場勇平 / 折居裕 / 太田智之 / 渡二郎
「Summary」単発早期大腸癌1,382病変(M癌:970病変, SM癌:412病変)について, リンパ節転移率, 遠隔転移率, 生命予後, 内視鏡治療の根治率について検討した. M癌およびSM垂直浸潤距離1,000μm未満のSM-s癌においてはリンパ骨転移は認めなかった. 一方, SM垂直浸潤距離1,000μm以上のSM-m癌におけるリンパ節転移率は12.6%であった. 遠隔転移例は2例, 0.14%であり, いずれも死亡している. 早期大腸癌における原病死はこれら2例のみであり, 早期大腸癌の生命予後は99.9%と良好であった. 初回内視鏡治療を施行した1,011病変中, 初回内視鏡治療で根治が得られたものは918病変(90.8%)であった. 一方, 内視鏡治療後再発をみたものは22病変(2.2%), 内視鏡治療後外科手術を行ったものは71病変(7.0%)であった. 内視鏡治療後再発例22病変中, 19病変は再内視鏡治療により根治が得られ, 追加外科手術が必要であったものは3例であった. したがって, 早期大腸癌に対する内視鏡治療の根治度は, 再内視鏡治療も含めると, 92.7%と高率であった.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 54-58, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
大腸癌の微小リンパ節転移(ITC)の臨床的意義
味岡 洋一 / 島田能史
「Summary」旧来の微小転移は, “HE標本による組織検索では検出できない癌の転移”から「HE標本で認識可能な0.2mm未満の癌細胞集団」にその定義が変更され, isolated tumor cell(ITC)の名称が当てられている. 大腸進行癌ITCの臨床的意義についてはこれまで多くの検討がなされているが, 統一的見解は得られていない. 筆者らのデータではITC陽性リンパ節3個以上の症例は, 2個未満に比べ有意に予後不良であった. 大腸SM癌でもその15%前後にはITCが存在する. これまでSM癌のITCと予後との関連を検討した報告はないが, ITCと相関する原発巣SM癌の病理組織学的因子を検討することで, 内視鏡的切除SM癌の治療方針を決定する有用な情報が得られる可能性がある. 低異型度癌, SM垂直浸潤距離850μm未満の病変はITC陰性であり, これらの癌は内視鏡的切除でのより確実な根治が期待される. 「はじめに」リンパ節転移は大腸癌患者の生命予後を左右する重要な因子であり, 従来その同定はHE標本による病理学的検索によりなされてきた.
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大腸癌FRONTIER Vol.1 No.2 65-69, 2008より
【特集 大腸SM癌の治療】
遺伝子多型とは何でしょうか?大腸癌発生に遺伝子多型は関与しますか?
井上裕 / 森 正樹
「Summary」ヒトの疾患(common disease)に関連する遺伝子群を包括的に探索する目的で, 全ゲノム遺伝子多型解析が世界中で行われはじめた. 多型解析とは「ある疾患関連遺伝子があり, そのそばに多型部位が存在すれば, 決まってその多型はその疾患と連動するはずだ」という基本原理に基づいた解析法である. 2007年以降, 大腸癌においても報告が相次ぎ, 現在まで6箇所の多型が有力な発症候補とされている. これらの多型に関連する遺伝子候補も報告されるようになった. 全ゲノム遺伝子多型解析法はきわめて有効な遺伝子探索法であると考えられる. 「はじめに」遺伝子多型を手がかりに癌の原因遺伝子に迫る研究が近年盛んに行われており, いくつかの大きな研究成果が報告されはじめた. ある個人間の遺伝子の配列情報を比較していき, 異なった配列がみつかればそれは遺伝子多型と呼ばれるが, このバリエーションには無数の組み合わせが存在する. 一般には, ゲノム上数百塩基に一つの頻度で多型は存在するといわれている.