【特集 生殖系列細胞の凍結】
特集にあたって
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- 掲載誌
- HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY Vol.20 No.2 10, 2013
- 著者名
- 吉村 泰典
- 記事体裁
- 抄録
- 疾患領域
- 代謝・内分泌
- 診療科目
- 産婦人科
- 媒体
- HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY
精子, 未受精卵子, 胚などの生殖系列細胞の保存は, 生殖補助医療の実施において重要な意義を有している. 細胞を長期保存するためには凍結することが必要となる. 生殖医学領域では1950年代に凍結保存精子が人工授精に応用されて以来, 体外受精や顕微授精などの生殖補助医療の技術の進歩に伴い, 胚の凍結が広く用いられるようになり, 現在では生殖系列細胞の凍結は, 臨床の場で必要不可欠な医療技術となっている. 従来, 胚ではプログラムフリーザーを用いた緩慢凍結法が一般的であったが, 最近ではガラス化法を用いた保存法が開発され, 臨床応用に至っている. 近年, 癌患者に対する手術療法, 化学療法や放射線療法を中心とした集学的治療法の進歩に伴って, その治療成績の進歩は瞠目に値するものがある. そのため, 癌治療前に未受精卵子や卵巣組織を温存して将来の妊孕能を確保してゆく気運が高まっている. 未受精卵子の凍結保存による妊娠例はわが国も含めて1,000人以上の児が出生していると報告されているが, 卵子の採取によって早期治療が必要な原疾患の処置が遅れる事態が懸念される. 卵巣凍結においては, 診断後直ちに腹腔鏡下手術で卵巣または卵巣組織を採取し, 凍結保存に供することはできるが, 凍結融解後の組織の移植による卵胞発育や成熟卵子の確保が困難であること, さらには移植卵巣を介して悪性細胞の再移入などの問題点が克服されなくてはならない. いずれにしても, 悪性腫瘍患者の妊孕能温存に関しては, 治療開始前に移植医療専門医と原疾患を治療する腫瘍専門医による十分な情報交換と治療協力, 患者や家族に対するカウンセリング体制の確立が不可欠である. 近年の生殖医療における凍結技術は, ガラス化保存法の臨床応用によりその進歩には目覚ましいものがある. 生殖系列細胞のみならず卵巣や精巣などの組織凍結が可能となれば, 新たな治療戦略の展開も期待できるであろう. 本特集が今後の生殖医療の実践に少しでもお役に立てれば幸いである.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。
