妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)はInternal Association of Diabetes in Pregnancy Study Group(IADPSG)によって2010年に提案された国際統一診断基準1)によって,「妊娠中の明らかな糖尿病」を除外し「糖尿病に至らない程度の妊娠中の母体高血糖」と再定義された。これによってGDMは,妊娠中,特に妊娠中期以降のインスリン抵抗性の増大を契機に発症した糖尿病より軽症の母体高血糖という概念を確立した。一方,「妊娠中の明らかな糖尿病」には,①妊娠前にすでに発症していたにも関わらず「見逃されていた糖尿病」,②妊娠中の母体耐糖能における生理的変化を背景として発症したより重症の(糖尿病合併妊娠に匹敵する)母体高血糖,さらに③妊娠中に偶然発症した1型糖尿病など,さまざまな病態が存在する2)。GDMの産褥管理はきわめてシンプルであるため,本稿ではGDMだけではなく「妊娠中の明らかな糖尿病」の産褥管理についても解説する。
「key words」妊娠糖尿病,妊娠中の明らかな糖尿病,産褥管理,母乳哺育