「ライソゾーム病」 早期診断の重要性
病態と臨床的特徴
ライソゾーム(リソソーム)は、細胞内小器官のひとつであり、さまざまな酵素を含み生体物質の分解(異化)を担う細胞内の「リサイクル工場」と例えられます。ライソゾーム内の酸性分解酵素などが遺伝子の変化によって機能低下や欠損を生じ、それによって引き起こされる先天代謝疾患を総称してライソゾーム病と呼びます。酵素によって分解されるべき物質(基質)が蓄積し障害された酵素の種類により数十の疾患に分類されます。ライソゾームはほぼ全身の細胞に存在するため、蓄積する基質の分布やその影響の度合いによって神経、筋、骨、心臓、腎臓など症状のでる臓器は疾患によって異なります。先天性疾患ですが、基質が臓器に蓄積してはじめて症状が出現するため、成人期まで症状が乏しい場合もあり早期診断には困難があります。
細胞内小器官
治療の進歩と早期診断の重要性
一方で、一部の疾患には治療法が開発され注目を集めています。現在、Gaucher病、Pompe病、Fabry病、Hunter症候群(ムコ多糖症II型)などでは、不足した酵素を補う「酵素補充療法」や、酵素の構造を安定化させる「分子シャペロン療法」が可能となり予後が劇的に改善しています。しかし、治療可能な疾患であっても推定される有病率に対し診断・治療を受けている患者数は少ないのです。臓器障害は進行すると不可逆的であり、早期治療が患者の転帰を改善するため、疑わしい症状を見逃さないことが診断の第一歩となります。また、遺伝性疾患であることから、1人の診断は家族のスクリーニングや早期介入の契機となることがあります。
本疾患群への認識を深めることが、診断の遅れを防ぐ第一歩です。ライソゾーム病の初期症状は各疾患に特有な症状であることは少なく、原因不明の臓器障害や関節拘縮などの症状を抱え、未診断の患者さんが数多くいるのではないかと考えられています。ありふれた症状の背後に、治療可能な希少疾患が隠れているかもしれない。その「気づき」が早期診断のカギとなる疾患群です。
略歴
右田 王介(Ohsuke Migita)
| 1999年 | 筑波大学医学専門学群 卒業 |
| 2005年 | 筑波大学大学院人間総合科学研究科 修了 |
| 2005〜2009年 | 国立成育医療センター遺伝診療科レジデント |
| 2009〜2012年 | The Hospital for Sick Children(カナダトロント小児病院)ポストドク |
| 2014〜2020年 | 聖マリアンナ医科大学小児科 講師 |
| 2021〜2022年 | 筑波大学医学医療系小児科 准教授 |
| 2022年 | 聖マリアンナ医科大学臨床検査医学 教授 |

