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巻頭言

日本のヒトES細胞研究を妨げているもの

中辻憲夫

再生医療 Vol.5 No.1, 19, 2006

「ヒトES細胞研究を積極的に推進しない, 諸外国より遅れても構わない」との政策決定を誰がどの場でいつ行ったかと問うても, だれも心当たりはないだろうし責任の所在も不明だ. しかし, 日本の現状は, 誰も決めていないはずの政策決定を行ったと同じ状況にある. (1)ヒトES細胞を表題に含む文献を検索したところ, 2004年1月から2005年8月までに世界で約260編がヒットするが, 日本からの原著論文は1編のみである. (2)ヒト凍結胚提供と使用という懸案の多い樹立研究と, ES細胞株の分配を受けて研究するだけの使用研究とが同様に厳格な2段審査(研究機関IRBと文科省専門委員会)を受けており, IRBへの申請から文科大臣の確認までに平均12.8ヵ月という膨大な時間と労力を要している. 研究者にとってはヒトES細胞研究に参入する決断を再考する抑止力になっている. 諸外国ではIRB審査のみ, しかも細胞株の使用という簡明さが配慮されて1ヵ月程度で開始できる. (3)再生医療のためのES細胞研究では, ヒトES細胞のデータなしには評価が低く, 最初からヒトES細胞で実験を始めるのが世界標準だが, 日本ではいまだに動物ES細胞で研究実績をあげてからヒトES細胞を使いなさいという指導が行われる.

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