ある程度研究が進み,ガイドラインも整備されつつあるとはいえ,まだまだ老年病の領域にはエビデンスが乏しい。そもそも高齢者は個人差が大きく,検査値や所見だけに頼って定型的に医療を行うことに無理がある。高齢者では,個々の病態に加えて生活機能やQOL,生活環境,意思,嗜好などを考慮した医療とケアを実践することが何より大切である。では、そのような総合的臨床能力を高めるにはどうしたらよいであろうか?正確な老年病学的知識に裏打ちされた症例検討会のような実践とフィードバックの場をもつことがベストであろうが,次の手は,練習問題として症例を分析しつつその解説を読み,目の前の患者に応用する力を身につけることであり,それが本書の目的である。
本書は,老年病学を症例に基づいて理解していただくことを目的に,100の課題を集めたものである。まず,老年病に精通している全国の医師に声をかけ,タイトルを募った。そして,重複を避け,系統的に構成するように100タイトルに絞り込んで企画された。
課題提示と執筆を快くお引き受けいただいた多くの執筆者に感謝するとともに,読者の皆さんと多様な症例,そして多様な解釈を共有できる喜びを感じている。上記のように多様性こそが老年病学の真髄であるのだから,症例検討会に参加する気分で,あるいは気楽な読み物として楽しんでいただけたら幸いである。
(秋下雅弘「序文」より)
Chapter 1 老年症候群
・ふらつき・転倒
・サルコペニア・フレイル
・低栄養・栄養摂取
・嚥下障害・誤嚥
・認知症
・不眠・うつ
・疼痛
・排尿障害
・その他の症候
Chapter 2 高齢者の疾患
・呼吸器疾患
・神経疾患
・高血圧・循環器疾患
・脳血管障害・動脈硬化
・糖尿病
・その他の内分泌代謝疾患
・骨粗鬆症
・消化器疾患
Chapter 3 老年医学の基本
・高齢者診察
・薬物療法
・在宅ケア
・終末期医療
・高齢者医療全般
・介護・福祉制度
・健康増進