近年の循環器疾患患者の増加に伴い,ペースメーカ,植え込み型除細動器(ICD)・心室再同期治療器(CRTあるいは除細動機能付き:CRT-D)による治療を受ける患者数も年々増加している。・・・デバイス治療が広く社会的にも受け入れられるようになってきた一方で,日常の生活環境や職場環境の変化が,これらのデバイス患者に不安をもたらす要因となってきていることも事実である。その最も大きな要因が電磁干渉である。
本書は,これら生体内植込みデバイス患者の電磁干渉に関する種々の問題に対して,デバイス治療に携わる臨床医や放射線技師,臨床工学技士などの医療従事者,また産業保健に従事する者などが,デバイス患者の不安を解消し,適切な指導が行えるようにとの気持ちで企画したものである。平成16~18年度厚生労働科学研究・労働安全衛生総合研究事業(主任研究者・安部治彦)では,これはらデバイス患者の電磁干渉に関する安全性についての研究を3年間にわたり広く行ってきたこともあり,この委員会のメンバーが中心となり執筆を行った。本書では,電磁干渉に関しての理論から検査,診断から対策,さらには職場環境や社会環境での患者指導の具体例まですべてを網羅している。
(安部治彦,豊島?健「編集者 序」より)
第1章 電磁干渉を理解するための理論と基礎知識
・電磁干渉とは
・電磁干渉に関する理論と必要な基礎知識
・電磁波の測定方法と実際(Irnichモデルを含む)
第2章 生体内植込みデバイスに関する基礎知識
・ペースメーカに関する基礎知識(単極・双極の違いも含めて)
・ICDに関する基礎知識
・CRT-P,CRT-Dに関する基礎知識
第3章 生体内植込みデバイス患者の生活環境と電磁障害
・ペースメーカ患者における電磁干渉
・ICD患者の電磁障害
・ペースメーカ・ICD患者の社会生活と電磁干渉
・携帯電話による電磁干渉と対策
・電磁商品監視装置(EAS)による電磁干渉と対策
・日常家庭電化製品に対する注意
第4章 生体内植込みデバイス患者の医療環境と電磁障害
・医療環境における電磁干渉と安全対策
/放射線診断機器(CT・MRIを含む)による電磁干渉 /ペースメーカ患者におけるカテーテルアブレーションと電磁障害 /放射線治療による電磁干渉 /神経電気刺激療法に冠する電磁干渉の問題 /ジアテルミーとペースメーカ /その他の医療機器による電磁干渉
・手術時の電磁干渉とその対策
第5章 社会生活並びに職場環境による電磁障害と対策
・国内におけるペースメーカ・ICD患者の就労の実際
・職場環境による電磁干渉と対策
・職場環境における産業保健対策