腫瘍マーカー―遺伝子・分子・蛋白マーカーの活用―
肝細胞癌の腫瘍マーカー
Surgery Frontier Vol.13 No.4, 40-45, 2006
肝臓癌は, わが国における癌死亡患者中, 第3位の頻度を占め, 慢性ウイルス肝炎感染の高い罹患率とあいまって, 消化器関連癌の中でも臨床上大きな問題となってきた. 近年, インターフェロン療法の改良, さらにHBVに対する抗ウイルス薬の開発がすすみ, 10年前に比較するとウイルス肝炎そのもののコントロールは格段に進歩している. これらの抗ウイルス治療の進歩は, 今後, 肝癌患者の数を激減させるものと予想される. しかし, 現時点では一般臨床の現場では, 肝癌の早期発見, 早期治療は, いまだ重要な課題のひとつであることは, 異論のないところであろう. 肝細胞癌の発生は, (1)慢性肝炎, 肝硬変患者から, (2)抗ウイルス治療終了後の患者からの2つに大別できる. (1)の患者についてのフォローアップ方法はすでに多くの知見が集積されてきたが, (2)の患者群についても, (1)に準じたフォローアップの方法が採用されるべきであろう. なぜなら, HCV感染患者においては, 特に肝硬変まで進行している場合, たとえウイルスが排除できたとしても, それ以前に癌化した成分が肝内に存在する可能性がある. また, HBV感染患者については, DNAウイルスであるHBVのヒトDNAへのインテグレーションが起こることが知られており1), 臨床的にウイルスが排除できたと認識できる状態でも, 依然として肝癌発生のリスクは存在するからである2). 本稿においては, 現段階で肝細胞癌のマーカーとして用いられているもの, さらに近年, 新しく提唱されている腫瘍マーカーを概説し, また, 最近の新たな知見を加えながら今後の展望を述べる.
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。