血栓 (症) をめぐる様々な話題を,主として臨床的側面から捉え,平易でプラクティカルな解説を加えてゆく。血栓症の診療に携わる各科臨床医を対象に,レビュー形式による特集企画および各種連載企画を中心に構成する。
■特集 データブック アテローム血栓症の大規模臨床試験 PART3
○特集によせて/池田康夫
1.動脈硬化とイベント発症
1.ABO(H)血液型と血管疾患の関連:系統的および大規模調査の解析から/小櫃由樹生
2.Polyvascular diseaseの心血管系イベント発生率への影響:アテローム血栓症のイベントリスクに関する国際観察研究(Registry of REACH:REduction of Atherothrombosis for Continued Health)からの検討/細野光治 ほか
3.アテローム血栓症疾患に合併した腹部大動脈瘤の心大血管系危険因子と合併疾患の検討:Reduction of Atherothrombosis for Continued Health registry症例の解析に基づいて/柚木靖弘 ほか
4.アテローム血栓症におけるイベントリスク/森本圭介 ほか
5.アテローム血栓症の危険因子を持つ,もしくはアテローム血栓症を有する外来患者における4年間の心血管イベント発生率の比較決定因子/重松邦広
6.アトルバスタチンは内頸動脈粥状硬化症患者の心血管イベントリスクを減少させる:SPARCL試験の第2次解析/福本義弘 ほか
7.間歇性跛行を有するあるいは有さない末梢動脈疾患患者のトレッドミル運動と筋力耐性訓練の検討―無作為任意抽出試験/前田英明 ほか
8.症候性末梢血管疾患患者における血管リスク因子の変化と血管イベントの発生/佐藤 紀
9.日本人の高コレステロール血症患者を対象としたエイコサペンタエン酸(EPA)による主要冠動脈イベントの発生抑制効果(JELIS):無作為化オープンラベル試験/石川雄一
10.末梢動脈疾患(PAD)患者における心血管イベント発生予測モデル:Second Manifestations of ARTerial disease(SMART) cohort studyより/佐藤 成
11.末梢動脈疾患を有する高齢患者における症状の有無による死亡と血管イベント発症の比較検討/進藤俊哉
12.無症候性末梢動脈病変を有する糖尿病患者におけるアスピリンと抗酸化剤の心血管イベントおよび予後に及ぼす効果の比較検討―多施設無作為化比較検討試験(POPADAD trial)/谷口 哲 ほか
2.心臓
a.虚血性心疾患
1.2型糖尿病患者における低用量アスピリンの動脈硬化性疾患1次予防効果/副島弘文 ほか
2.ABI低値者へのアスピリン投与による心血管イベント予防効果―AAA(Aspirin for Asymptomatic Atherosclerosis)試験/池田宇一
3.アジア人と白人を比較した急性冠症候群後の心房細動発症頻度に関するメタ解析/山本啓二
4.静脈系血栓症とそれに引き続く動脈系の心血管イベント発症:デンマークでの20年のコホート研究から/村崎かがり
5.流血中の内皮細胞の数と急性冠症候群に関する研究/室原豊明
b.血栓溶解療法
1.CURRENT-OASIS7試験での冠動脈インターベンションが施行された急性冠症候群症例への2倍量と通常量クロピドグレルと高用量と低用量アスピリン投与の比較検討/大場崇芳 ほか
2.CYP2C19機能欠失変異保持者およびPPI服用者におけるクロピドグレル服用症例の心血管イベントリスク/後藤信哉
3.PCIにおける新しいP2Y12阻害薬とクロピドグレルの比較に関するメタ解析/一色高明
4.クロピドグレル耐性と心血管病罹患のリスク―最新のメタ解析/下島正也 ほか
5.急性冠症候群患者におけるプラスグレルとクロピドグレル/谷川高士 ほか
6.急性冠症候群におけるクロピドグレルとアスピリンの投与量の比較―The CURRENT-OASIS 7 Investigators/平山治雄
7.侵襲的治療を予定する急性冠症候群症例におけるticagrelorとclopidogrelの比較:PLATO試験の解析結果より/坂田泰彦 ほか
8.薬物溶出性ステント植込み後患者における,アスピリン・クロピドグレル両剤非反応性の頻度とその臨床的意義/中川義久
c.うっ血性心不全
1.心不全症例における血栓塞栓症のリスク―SCD-HeFT試験からの解析/大塚崇之 ほか
d.インターベンション
1.1年後以降にフォロー期間を延長した場合の薬剤溶出性ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)の予後の包括的メタ解析/渡部宏俊 ほか
2.SESおよびPESの実臨床における早期および遅発性ステント血栓症について―Bern,Rotterdamにおけるコホート研究/高山忠輝 ほか
3.TAXUS II トライアルにおける5年間の追跡結果―新規冠動脈1枝病変における2種類のパクリタキセル溶出性ステント(Slow-release:SR,Moderate-release:MR)の有効性を検討した無作為化臨床試験/鶴巻良允 ほか
4.冠動脈ステント留置の予後―ベアメタルステント時代と薬剤溶出ステント時代の比較/馬崎 徹
5.シロリムス溶出性ステントをベアメタルステントと比較した14の臨床試験の検討/清野義胤
6.心房細動患者における薬剤溶出性ステントの有効性と安全性/井上晃男
7.糖尿病患者に対するパクリタキセル溶出性ステント/荻田 学 ほか
8.内皮前駆細胞を捕捉するGenousステントを非選択的に使用した場合の1年間の臨床的予後の検討/中村 猛 ほか
9.パクリタクセル溶出性ステント(タクサス)に伴うステント血栓症の頻度,時期,その関連因子―TAXUS II,IV,V,VIの3,445例のメタ解析と3年目までのフォロー/伊苅裕二
10.無作為臨床試験における薬剤溶出ステントのステント血栓症/吉野秀朗
11.薬剤溶出性ステントおよび金属ステントで治療された急性冠症候群症例における早期ステント血栓症の検討/小宮山伸之
3.脳
a.頸動脈・脳動脈硬化
1.MERCIリトリーバーを用いた中大脳動脈急性閉塞に対する臨床成績,MERCIおよびMulti MERCI TrialにおけるM1/M2の比較/坂井信幸 ほか
2.急性脳出血に対する遺伝子組換え活性型第VII因子(Recombinant Activated Factor VII;eF VII a)の効果と安全性/吉川容司 ほか
3.急性脳出血患者における強化血圧降下療法(INTERACT):ランダム化パイロット試験/田中耕太郎
4.頸部頸動脈狭窄症に対する内膜剥離術とステント血管形成術の多施設共同ランダム試験/小笠原邦昭
5.頭蓋内動脈狭窄患者における血圧と脳梗塞再発との関連/伊藤康男 ほか
6.無症候性頸動脈高度狭窄例に対する脳卒中発症予防に対する最善の治療は,内科的(非手術的)介入である:系統的文献レビューとその解析結果より/横田千晶 ほか
b.脳梗塞の抗血小板療法
1.急性期症候性脳または頸動脈狭窄患者における塞栓症抑制に対するクロピドグレルとアスピリン併用対アスピリン単独の無作為化,オープンラベル,盲検エンドポイント試験(CLAIR試験)/棚橋紀夫
2.抗血栓薬内服患者における血圧値と出血イベント:Bleeding with Antithrombotic Therapy Study(BAT研究)/豊田一則
3.シロスタゾールの脳卒中再発予防効果に関する試験―アスピリンを対照とした脳卒中再発予防における二重盲検非劣性試験/勝又俊弥 ほか
4.脳卒中再発予防におけるアスピリンと徐放性ジピリダモール併用とクロピドグレル単剤との比較/伊藤義彰 ほか
c.脳梗塞の抗凝固療法
1.心房細動を有する患者に対するダビガトランのワルファリンとの非劣性比較試験/吉川容司 ほか
2.脳卒中/一過性脳虚血発作の既往を有する心房細動患者におけるダビガトランとワルファリンの比較:RE-LY試験サブグループ解析/奥村 謙
d.脳梗塞の血栓溶解療法
1.一過性脳虚血発作と軽症脳卒中に対する早期治療の効果(EXPRESS研究)/星野岳郎 ほか
2.発症3~4.5時間以内の急性期脳梗塞例に対するアルテプラーゼを用いた経静脈的血栓溶解療法/青木淳哉 ほか
4.高齢者・認知症
1.80歳以上の患者に対する高血圧治療(HYVET)/超高齢高血圧患者の臨床試験での認知機能評価(HYVET-COG)における認知症発症と血圧低下の関係/青木志郎 ほか
2.高齢者における原因不明の脳梗塞と卵円孔開存の関連性/安井麻里子 ほか
3.皮質下性血管性認知障害患者に対するドネペジルの効果:CADASIL患者対象の二重盲検試験/山崎貴史 ほか
5.末梢血管・静脈血栓・肺塞栓
1.CHARISMA試験におけるPAD患者の検討/福井大祐
2.D-ダイマー上昇は特発性静脈血栓塞栓症の再発を予知する―大規模解析から/市来正隆
3.PAD(末梢動脈疾患)患者におけるシロスタゾールの長期安全性―CASTLE試験(Cilostazol:A Study in Long term Effects)/宮本裕治
4.PAD患者のバイパス手術において,ASAとClopidogrel併用投与の有用性に関する無作為試験/國吉幸男
5.PARTNERS(Peripheral Artery Disease Awareness, Ridk, and Treatment:New Resources for Survival)プログラムにおける,末梢動脈疾患が健康関連QOLに及ぼす影響/椎谷紀彦
6.高齢者の運動と静脈血栓症の関連/太田 敬
7.孤立性ひらめ筋・腓腹筋静脈血栓症:本症患者は治療的抗凝固療法を受けるべきか?/應儀成二
8.静脈血栓後症候群の発症予防における圧迫療法の効果/細井 温
9.静脈血栓塞栓症における血漿フィブロネクチン濃度/駒井宏好
10.静脈血栓塞栓症の遺伝学/宮田哲郎
11.心血管疾患危険因子と静脈血栓塞栓症(VTE)/荻原義人 ほか
12.微量アルブミン尿と静脈血栓塞栓症のリスク/杉本昌之 ほか
13.末梢動脈疾患(PAD)の非侵襲的診断の費用対効果における多施設ランダム化試験(DIPAD trial:Diagnostic Imaging of Peripheral Arterial Disease)/岡村哲平 ほか
14.慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する治療成績の関連因子/荻野 均
6.包括的管理・治療
1.2型糖尿病患者における厳格血圧コントロールの心血管イベント抑制効果/卜部貴夫
2.CHARISMA試験の心筋梗塞,脳卒中の既往もしくは症候性末梢動脈疾患を有する症例におけるサブグループ解析(CAPRIE-like cohort)/光武良亮 ほか
3.LDLコレステロール低値と脳出血死亡との関係/野田博之 ほか
4.SPARCL試験における出血性脳卒中/脳梗塞,一過性脳虚血発作におけるLDLコレステロール厳格治療の効果:SPARCL試験/冨本秀和
5.アテローム血栓症を有する外来患者における1年追跡による循環器イベント発生率の検討(REACH Registry)/久松隆史 ほか
6.イコサペント酸(EPA)の投与がスタチン治療中の冠動脈疾患,脳血管疾患患者の再発予防に有効である―JELISにおけるEPAの2次予防効果/山下智也 ほか
7.血中CRP濃度と冠動脈疾患,脳卒中,全死亡リスク:コホート研究に登録された個々の症例データを元にしたメタ解析/北川一夫
8.心房細動の脳卒中,塞栓症予防における経口Xa因子阻害薬リバロキサバン1日1回投与とビタミンK拮抗薬の比較―ROCKET AF試験の論理とデザイン/是恒之宏
9.脳血管障害と他の血管部位のアテローム血栓症を合併した患者の心血管イベント発症率:Japanese REACH Registryにおける1年後アウトカムの結果/内山真一郎
10.脳卒中発症に対する微量アルブミン尿の影響―メタ解析/森真由美 ほか
11.米国での動脈硬化性血栓症外来患者に対するアスピリンと他の抗血小板薬の使用実態について(REACHレジストリーより)/川名正敏
7.検査法・診断法
1.冠動脈ステント留置術を受けた患者における,臨床アウトカムに対する血小板機能検査法の比較/野口将彦 ほか
2.危険因子を基にした新しいアプローチ法を用いた,心房細動例の脳梗塞,血栓塞栓症を予測する詳細な臨床的リスク層別化法/井上 博
3.頸動脈内膜中膜肥厚および頸動脈プラークの有無を用いることによる冠動脈疾患のリスク予測の向上―ARIC (Atherosclerotic Risk In Communities)試験/吉田雅伸 ほか
8.薬物治療・副作用など
a.薬物療法
1.PCI後の血小板機能検査に基づくクロピドグレルの標準用量投与と高用量投与/山根啓一郎 ほか
2.ST上昇型急性心筋梗塞に治する経皮的冠動脈インターベンション時の血栓吸引療法の有用性についての臨床試験/遠藤光明 ほか
3.アスピリンは末梢動脈疾患患者の心血管イベント減少をもたらすか?/由利康一 ほか
4.新規治療薬トロンボモジュリンの二重盲検試験解説/丸山征郎
5.心房細動症例におけるワルファリンによる抗凝固療法の正味の臨床利益/大塚崇之 ほか
6.スタチンは単独で重症虚血肢に対し鼠径部以下のバイパス術を受けた患者の死亡率を減少させる/笹嶋唯博
7.スタチンへのエゼチミブ上乗せ効果の検証―SANDS・ENHANCE試験より/荒井秀典
8.短期間のワルファリン治療中断に伴う血栓塞栓症のリスク/井上 博
9.ファモチジンによる低用量アスピリン服用者における消化性潰瘍および逆流性食道炎発生予防についての第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(FAMOUS試験)/藤城光弘
10.ファモチジンの低用量アスピリン起因性上部消化管傷害の再発予防効果はパントプラゾールに劣る/渡辺俊雄 ほか
11.末梢動脈疾患における経口抗凝固療法と抗血小板療法について/井上芳徳
12.薬物溶出性ステント植込み後の3種抗血小板薬治療が虚血性イベントを低下する:シロスタゾール併用療法の,薬物溶出性ステント植込み後の心血管主要イベント発症率低下効果(DECREASEレジストリー)/宮下裕介
13.ランダム化比較試験のメタ解析によるアスピリンの1次予防および2次予防効果/後藤信哉
b.副作用
1.安定した血管病あるいは血管病の危険因子のみを有する患者に対する抗血小板薬併用療法を伴う出血性合併症―Clopidogrel for High Atherothrombotic Risk and Ischemic Stabilization, Management, and Avoidance(CHARISMA)試験のサブ解析/石川ひろみ ほか
2.チエノピリジン系薬剤による血栓性血小板減少性紫斑病には2つの発症機序が存在する/八木秀男 ほか
c.血液凝固異常
1.血液凝固第VII因子,第VIII因子,フォンビルブランド因子の血漿濃度に関連する新たな複数の遺伝子座/篠澤圭子
2.抗リン脂質抗体症候群のハイリスク患者の臨床経過/杉山浩二 ほか
d.遺伝子多型
1.クロピドグレル投与による臨床効果におけるCYP2C19遺伝子型の影響/梅村和夫
2.若年発症の患者1,880人における凝固因子第Vの遺伝子多型Leidenと急性心筋梗塞の関係/泉 学 ほか
3.チトクロームp-450の遺伝子多型とクロピドグレルに対する反応/河野浩章 ほか
e.薬物相互作用
1.冠動脈疾患に対するオメプラゾール併用の有無でのクロピドグレル投与について/本江純子
f.その他
1.動脈硬化性腎動脈狭窄症と腎機能障害の患者におけるステント留置療法/阿部倫明 ほか
■連載
○話題の論文
・糖尿病患者における腎予後と心血管疾患に対するアトルバスタチンの効果:糖尿病患者におけるアトルバスタチンの多施設共同研究の解析/加藤佐和子 ほか