甲状腺眼症は,バセドウ病や橋本病に伴ってみられる眼窩組織(眼瞼や涙腺,球後軟部組織の外眼筋や脂肪組織など)の自己免疫性炎症性疾患である。症状は多彩で,上眼瞼後退,眼瞼腫脹,眼球突出,涙液分泌低下,結膜・角膜障害,重症例では眼球運動障害や視力低下を来して,quality of life(QOL)が著しく損なわれる。中等症〜重症の活動性甲状腺眼症患者には,メチルプレドニゾロン静注パルス療法が第一選択の治療法とされているが,眼球突出に対する効果は限定的であり,非活動期になってから視機能回復手術が推奨されている。したがって病悩期間が長く,患者の視機能,社会心理面,経済面での負担は多大である。2020 年1 月,分子標的薬であるテプロツムマブが米国食品医薬品局により甲状腺眼症の治療薬として初めて承認され,本邦でも臨床試験を経て,2024 年11 月に上市され,甲状腺眼症患者に対する治療が大きく変化してきている。
そこで本書では,甲状腺眼症の診療について網羅的に,かつ最新の知見を盛り込んで,1冊にまとめた。第Ⅰ章では甲状腺眼症の歴史・疫学,第Ⅱ章では甲状腺眼症の病態,第Ⅲ章では治療の歴史として従来の甲状腺眼症治療,第Ⅳ章ではテプロツムマブ治療の進歩としてテプロツムマブの臨床試験や実臨床での有効性と安全性,第Ⅴ章では今後の展望について紹介する。本書が甲状腺眼症の診療に携わるすべての医療者の知識を深め,甲状腺眼症の早期診断と適切な治療,重症化の防止に役立つことを期待する。また,本書が多くの甲状腺眼症患者のQOL の改善に役立つことを祈念する。
(廣松雄治「序」より抜粋)
序
執筆者一覧
略語一覧
第Ⅰ章 甲状腺眼症の歴史・疫学
本邦における甲状腺眼症の歴史・疫学
第Ⅱ章 甲状腺眼症の病態
甲状腺眼症の病態
第Ⅲ章 治療の歴史
1.ステロイド療法
A.作用機序
B.局所注射の有効性・安全性
C.ステロイド・パルス療法の有効性
D.視神経症に対するステロイド・パルス療法の有効性
E.ステロイド・パルス療法の安全性
2.ボツリヌス療法
3.放射線治療
4.外科療法
A.眼瞼手術
B.斜視手術
C.眼窩減圧術
第Ⅳ章 テプロツムマブ治療の進歩
1.開発の歴史
A.The Teprotumumab(TEPEZZAⓇ)Story
B.テプロツムマブ(テッペーザⓇ)ストーリー
2.作用機序・薬物動態
3.臨床試験成績
A.海外臨床試験成績(OPTIC試験,OPTIC-X試験)
B.国内臨床試験成績(OPTIC-J試験)
4.テプロツムマブのリアルワールドエビデンス
A.有効性
B.安全性
C.その他
5.副作用
A.高血糖
B.聴覚障害
6.国内外のガイドラインにおける推奨
第Ⅴ章 今後の展望
新規治療薬の開発状況
索引