かつて、肺高血圧症は特効薬のない、死を免れない難病と考えられてきました。しかし、本書の初版出版当時には、適切な治療と正しい在宅自己管理を行うことで、すでに肺高血圧症患者さんの予後は大幅に改善していました。
しかし、インターネットを検索すれば悲惨な情報しかヒットせず、「どうせすぐに死んでしまう」と思い込んで、正しいタイミングで治療に進めない患者さんたちも多かったのです。
そこで、「肺高血圧症で死ぬのはもったいない」ということを、全国の肺高血圧症患者さんに理解していただくために、岡山医療センターで行われている治療・管理の実際をお伝えしようと本書を企画しました。多職種なスタッフの協働による肺高血圧症の長期管理が、患者さんの生命を守るためだけでなく、生活の質(QOL)を最大限に高めるために必要だと伝えたかったのです。
10年を経て、この度本書の改訂の機会を得ました。過去10年の間にも、当センターの肺高血圧診療はさらに進歩しました。診断後、早期から積極的治療を行うことにより、今や肺動脈性肺高血圧症患者さんの平均余命は20年に達しています。「余命10年」はもはや過去のことで、肺高血圧症のために命を落とすのはかなり稀なことになりました。多くの肺高血圧症患者さんは、仕事や家事、旅行や運動など当たり前の生活を行えるようになっています。
本書では、そんな患者さんたちの貴重な体験談も紹介しました。
『もう肺高血圧なんかで悩まない』-本書のメッセージは、タイトルに端的に表れています。いまだに肺高血圧症の根治は達成できていませんが、略治、あるいは寛解と呼んでも差し支えないような状態はすでに多くの患者さんで達成できていますし、新たな治療薬の開発も依然進行中です。きちんと治療を受けさえすれば、もはや糖尿病のような慢性疾患と大差なくなった肺高血圧なんかで悩む必要はありません。全国の肺高血圧症患者さんが希望をもって治療に取り組んでいただくうえで、本書がその一助となれば幸いです。
さいごに、本書の執筆にご協力いただいた、当センター循環器内科、看護部、薬剤部、リハビリテーション科、栄養管理室のメンバーに心から感謝いたします。
(松原広己「はじめに」より)
コンテンツ
はじめに
第 1 章 肺高血圧症とは
第 2 章 肺高血圧症で悩まないために
第1節 看護師からのメッセージ
第2節 薬剤師からのメッセージ
第3節 理学療法士からのメッセージ
第4節 栄養士からのメッセージ
第 3 章 患者さんからのメッセージ
・新しい治療を前向きに,楽しみに
・体と相談しながら,できることは何でも
あとがき
付録 肺高血圧症の関連情報が得られるウェブサイト(2022年10月現在)