トシリズマブ(TCZ)は,わが国で初めて開発されたIgG1サブクラスのヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体である。可溶型または細胞膜結合型のIL-6受容体に結合しIL-6とその受容体との結合を阻害することで,その後のシグナル伝達を抑制し炎症を鎮静化する作用を有する。2008年に適用承認を取得した全身型JIA,関節型JIA に加えて,2017年8月には,副腎皮質ステロイド薬による適切な治療を行っても疾患活動性を抑えられない高安動脈炎においても適用が拡大(皮下注射のみ)された。
『若年性特発性関節炎 トシリズマブ治療の理論と実際 2009』が初回出版されてから,今年で14年目となる。その間,TCZ の使用経験が蓄積され,わが国のみでなく世界中で従来の治療では難渋していた多くの患者さんを救ってきたことは紛れもない事実だろう。しかし,一方,IL-6シグナルを遮断する作用がもたらす「炎症反応のマスク化」は,患者さんの真の炎症反応を過少評価することにもつながり,臨床医を悩ますことにもなった。この薬剤は,まさしく「両刃の剣」であることを知らないといけない。
このたび,TCZ を取り巻く,多くの貴重な臨床経験を網羅した症例集を再び上梓することができ,私自身,小児および成人リウマチ医である執筆者の方々の貴重な知見を改めて知ることができ,深く感銘を受けている。TCZ という薬剤の特性を概説していただき,全身型JIA,関節型JIA,小児高安動脈炎におけるそれぞれの診断と治療の実際,有効例と無効例の症例呈示と盛りだくさんの内容になっているため,ぜひ皆さんに手に取っていただけたらと思っている。
本書が,これからTCZ を使用する局面に遭遇した先生方,そして患者さんのために,十分に活用されることを願ってやまない。
(森 雅亮「序文」より)
目次
第 1 章 トシリズマブ(TCZ)概論
1. 生物学的製剤と小児リウマチ性疾患/武井修治
2. IL- 6とトシリズマブ(TCZ)の開発の歴史/西本憲弘
3. トシリズマブ(TCZ)の作用機序と使用時の注意点/八代将登
4. トシリズマブ(TCZ)の適応疾患と今後の展開/南木敏宏
第 2 章 若年性特発性関節炎(JIA)の診断と治療
1. 全身型若年性特発性関節炎(sJIA)の診断と治療/野澤 智
2. 全身型若年性特発性関節炎(sJIA)の検査とその評価/八角高裕
3. 全身型若年性特発性関節炎(sJIA)に合併するマクロファージ活性化症候群(MAS)の診断と治療/清水正樹
4. 関節型若年性特発性関節炎(JIA)の診断と治療/久保田知洋
第 3 章 若年性特発性関節炎(JIA)へのトシリズマブ(TCZ)療法の症例報告
1 全身型若年性特発性関節炎(s J I A)
1)有効例
2)無効例
2 関節型若年性特発性関節炎(J I A)
1)有効例
2)無効例
3トシリズマブ( T C Z )使用中のマクロファージ活性化症候群( M A S )
①TCZ使用中のMAS例/井上祐三朗
②CAN使用中にMAS多発のため,TCZにスイッチした症例/西村謙一
4有害事象
1)投与時反応
2)感染症- ウイルス
3)感染症- 細菌感染症
4)感染症- 創傷治癒の問題
5)感染症- 感染症合併時の診療の注意点
第 4 章 小児高安動脈炎の診断と治療
1. 高安動脈炎の診断と治療(小児を中心に)/伊藤秀一
2. トシリズマブ(TCZ)使用下の高安動脈炎の疾患活動性の評価/伊藤秀一
第 5 章 小児高安動脈炎へのトシリズマブ(TCZ)療法の症例報告
1 小児高安動脈炎
1)有効例
2)無効例
連絡先・相談先(小児リウマチ診療支援M A P)