わが国ではCOPDのほとんどは喫煙によるものと考えられます。500万人を超える罹患者がいると推定されていますが、ほとんどの患者は治療や適切や生活指導を受けられていません。非常にcommonな病気であり、日本呼吸器学会としても啓発に力を入れて取り組んでいるところですが、疾患認知度はきわめて低いのが現実です。一方、COPDは、わが国の医療費増大の一因であるばかりでなく、わが国全体の介護負荷を増大させている疾患の1つでもあります。超高齢社会が現実化するわが国にとって、次世代にかかる負荷の軽減は必要不可欠な課題です。COPD患者自体を減らすこと、重症者を減らすこと、患者自身には元気になっていただき自立してもらうこと、これらはすべて私たちに課せられた重要な課題ではないでしょうか。
この度、『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第5版』が、多くの編集委員や協力者のもとに作成され、上梓されることになりました。本ガイドラインは、これまでのガイドラインの流れを引き継ぎ、疾患概念、病態、診断、治療について参考となる事項や手順を、新しい知見を加え最新版としたものです。第4版では身体活動性の向上と維持を管理目標に新たに取り入れましたが、今回も同様に重視しています。高齢社会を見据えて、身体活動性をよい状態に維持することは予後をよくするのみならず、自立した患者の生活のためにも非常に大切なことではないかと考えます。
薬物療法と非薬物療法は現在も進歩し続けており、治療の両輪として、今後も益々推進されていくものと思います。また、予防の重要性から、早期発見と早期介入がこれまで通り強調され、実施されていくことを期待したいと思います。国や地域で禁煙の啓発や施策が進めば、COPDの問題はいつかは自然に解決されることになります。しかしながら、実際には、患者が多い状態が当面は続くことが明らかです。本書が、臨床における医療従事者にとってCOPD患者の治療管理に役立てられるものになることを願っています。
(日本呼吸器学会 COPDガイドライン第5版作成委員会「序」より)
巻頭 ガイドラインサマリー
第Ⅰ章 疾患概念と基礎知識
第Ⅱ章 診断
第Ⅲ章 治療と管理