この度,「喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き」第1版が,一般社団法人日本アレルギー学会の協力を得て作成され,上梓されることとなりました。一般社団法人日本呼吸器学会では「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」を作成しており,また,日本アレルギー学会では「喘息予防・管理ガイドライン」を作成しています。それぞれのガイドラインでは「喘息とCOPDのオーバーラップ」について記載されていますが,本手引きでは歴史的なことも踏まえて詳細に記述し,また,呼吸器専門医のみならず非専門医にも理解しやすいように,ACOの全体像を第1章「1.全体の要約 AT A GLANCE」の項目に記載しました。
喘息とCOPDは,異なる原因によって異なる機序で病態は形成され,気道炎症、・気流閉塞の特徴・症状など異なりますが,喘息の特徴とCOPDの特徴の両者を併せもつ場合があります。このような病態を喘息とCOPDのオーバーラップ症候群と呼び,GINA&GOLD(Global Initiative for Asthma & Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の合同委員会は2014年にオーバーラップ症候群を「喘息の特徴とCOPDの特徴及び持続性気流閉塞を有する特徴を示す」と定義し,Asthma and COPD Overlap Syndrome(ACOS)と呼称しました。しかし,その後,“症候群”は原因不明(原因が判明後も使用する場合がある)で共通の病態(臨床症状・検査所見など)の場合に使用される言葉であること,喘息もCOPDも単一ではなくさまざまな機序によって病態が形成され,臨床的特徴も多様性を認める疾患であること,などから“症候群”という言葉はふさわしくないので,“症候群”という言葉を外して「喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)」と呼称することが提唱され,2017年に公開されたGINAでは,Asthma and COPD Overlap Syndrome(ACOS)をAsthma and COPD Overlap(ACO)とすることが記載されました。
本手引きでは現在から未来に向けての事項ではACOと記載しますが,本手引きで引用されている文献ではACOSと記述されていますのでACOSと記載します。よって,ACOとACOSの両者の記載が見られますが同一です。
本手引きの発刊を契機にさらに臨床研究が充実することを期待します。さらに,本手引きが呼吸器専門医のみならず非専門医にもお役に立つことを願っています。
○序
・喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き 2018 作成委員会
○第1章 全体の要約 AT A GLANCE
1.ACOの定義・診断・治療方針
○第2章 疾患概念と定義
1.喘息
2.COPD
3.ACO
○第3章 疫学
1.ACOの疫学
○第4章 病態の理解
1.気流閉塞の定義と概念
2.発症の病態
3.ACOの臨床的特徴
4.憎悪
○第5章 診断
1.診断の目安と基準
2.症状
3.喘息の既往
4.呼吸機能
5.気道可逆性
6.気道過敏性
7.画像
8.バイオマーカー
1)呼気NO(一酸化炭素)
2)喀痰中,末梢血好酸球検査
3)血清総IgE抗体と特異的IgE抗体
4)その他,バイオマーカーの候補
○第6章 多面的評価
1.喘息の重症度
2.COPDの病期と重症度
3.ACOの評価・重症度
○第7章 慢性気流閉塞
1.喘息リモデリング
2.高齢者喘息
○第8章 治療
1.ACOの治療