日本病態栄養学会NST委員会編,『認定NSTガイドブック2014 第4版』が完成いたしました。診療現場でNST活動をこれから開始するためのHow to本として2004年に最初に出版された本書は2008年,2011年と版を重ねるごとに内容の充実を図ってきました。前回の第3版ではNST加算を踏まえて編集するとともに,急性期の管理を中心として経腸栄養,静脈栄養の管理の項目を加え,慢性期の患者の管理は同様に本学会が編集する『病態栄養ガイドブック』の方にシフトするようにしました。また,正しい栄養スクリーニングと評価に力を入れ,世界に先駆け栄養状態の評価(スクリーニングとアセスメント)および栄養リスクを分けて評価する新しいプロトコール(日本病態栄養学会栄養評価ガイドライン作成委員会作成)を提唱しました。
今回の改定では,第3版の内容をそれぞれブラッシュアップすることを中心に作業を行いましたが,以前からの箇条書きスタイルを踏襲しつつ各項目を「病態栄養の基礎」,「栄養投与法」,「病態別栄養管理」,「症候別栄養療法」,「演習」の5章に整理して,より教科書として検索しやすいように配慮しました。また、ほとんどの項目に「症例」を提示し,NSTメンバー各職種が診療現場で患者さんに寄り添った栄養管理を体感し,実践しやすいように配慮しました。内容についても各項目で最新の情報をもとにリニューアルし,写真や図表を多く用いてボリュームアップし,現場の診療ガイドラインとしても使用可能な体裁に整えました。
すべての診療に必須である栄養管理の主役になる医療職が管理栄養士であることには異論がありませんが,医師,看護師,薬剤師をはじめとした多職種の連携によるNST活動の中で,それぞれの職種が現場で患者さんに直接接して,その訴えに傾聴し,疾患診療を栄養面から適切に支援するための入門書として,また繰り返し精読する教科書として,さらには各施設において栄養管理マニュアル策定の参考書として,大いに活用されることを期待しております。
またさらなる改訂に向けて見直し作業も同時進行して参りたいと考えておりますので,本書の内容について現場からの忌憚のないご意見をお寄せいただければ幸いです。
村上 啓雄
(「序文」より)
Chapter 1 病態栄養の基礎
1.栄養不良がもたらす影響
2.栄養評価法と栄養スクリーニング
3.栄養管理に必要な検査値とその解説
4.投与エネルギー,栄養素,水,電解質の決定
Chapter 2 栄養投与法
1.栄養投与法の選択
2.経口可能な補助食の使い方
3.経腸栄養
A.経腸栄養に必要な消化管の運動,消化・吸収の知識
B.経腸栄養の適応・禁忌
C.経腸栄養剤の種類とその選択
D.経腸栄養の実施方法(投与計画,速度の決め方)
E.経腸栄養の合併症とその対策
F.薬剤の投与方法(簡易懸濁法)
G.PEG
H.在宅栄養療法
4.静脈栄養
A.末梢静脈栄養法
(1)輸液の種類
(2)輸液の配合禁忌と側管投与法
(3)合併症および対策
(4)症例と解説
B.中心静脈栄養法
C.在宅栄養療法
Chapter 3 病態別栄養管理
1.重症患者における栄養管理
2.術前術後における栄養管理
3.外傷,熱傷における栄養管理
4.褥瘡と栄養管理
5.心疾患を有する患者の栄養管理
6.糖尿病を有する患者の栄養管理
7.腎疾患を有する患者の栄養管理
8.肝・胆道系疾患を有する患者の栄養管理
9.膵疾患を有する患者の栄養管理
10.腸疾患を有する患者の栄養管理
11.胃・腸管切除後の栄養管理
12.脳卒中患者の栄養管理
13.がん患者の栄養管理
14.リフィーディング症候群の予防と栄養管理
Chapter 4 症候別栄養療法
1.電解質異常,酸・塩基平衡異常
2.摂食・嚥下障害
3.悪心・嘔吐
4.食欲不振
5.下痢・便秘
6.脱水症
Chapter 5 演習
NSTでの実際の管理(1)
NSTでの実際の管理(2)
NSTでの実際の管理(3)
資料
1 主な高カロリー輸液用基本液
2 主なアミノ酸液
3 主な脂肪乳剤
4 主な総合ビタミン製剤
5 主な経腸栄養剤①
主な経腸栄養剤②
主な経腸栄養剤③