書籍
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2013.10.17 発売
癌と骨
定価 5,060円(本体4,600円+税)
発行形態 B5判 / 348ページ
ISBN 978-4-7792-1186-7
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5,060 (税込)
内容紹介

癌患者の生命予後の改善が得られるなかにあって,転移病変は予後やQOLを悪化させる最大の要因と言える。しかも,転移病変のうち骨転移頻度は高く,また骨転移による骨折は激しい疼痛によるQOLの低下に加え,運動機能の障害によるADLの低下をもたらすことから,骨転移は進行性癌患者にとって最大の脅威のひとつとなっている。したがって,癌に伴う骨病変の発症・進展機序の解明および予防・治療法の開発は重要な課題となっている。このような背景から,癌と骨のおのおのの研究者・医療従事者のあいだで現在得られている知識を共有するとともに,お互いの連携や協力関係の構築を通じて骨転移病変の形成・進展の防止と新たな治療法の開発に向けた努力を加速させるための一助とすべく本書が企画された。

本書では,まず,第1章と第2章で骨転移の疫学および病理についてご解説いただいたうえで,第3章では近年急速に解明が進んでいる骨転移の成立・進展のメカニズムについて,骨微小環境が形成する腫瘍細胞の生育・増殖に好適な環境と骨転移の増殖・進展メカニズムや,骨破壊病変の形成メカニズムなどについて最先端の研究者に概説していただいた。次いで第4章では,骨転移の症候,とりわけ癌患者のQOLに大きな影響を及ぼす骨折,脊髄麻痺,高カルシウム血症,疼痛について詳述していただいた。第5章では骨転移の診断を取り上げ,技術進歩の著しいX線・核医学検査のおのおのについて述べていただくとともに,骨代謝マーカーによる評価についてまとめていただいた。さらに光イメージング技術の骨転移診断への応用の可能性についても述べていただいたい。最後に第6章で骨転移の治療を取り上げ,ビスホスホネートや抗RANKL抗体による最近の治療成績をまとめていただくとともに,その合併症としての顎骨壊死について予防対策を含め述べていただいた。さらに放射線治療,外科的治療の現状と展望について概説していただいたあと,ホルモン療法に伴う骨病変の病態と治療について概説いただいた。そして骨転移患者のリハビリテーションについて,その具体的な対策や課題などを詳述していただいた。

本書が,癌の骨転移患者の診療・研究に少しでも活かされることを期待したい。

松本俊夫

(「序文」より)

目次

Chapter 1 骨転移の疫学

骨転移の疫学/徳橋泰明・上井 浩

1 『全国骨腫瘍登録一覧表』による疫学

2 剖検による疫学

3 その他の臨床的疫学

4 各腫瘍別骨転移頻度

おわりに


Chapter 2 骨転移の病理

骨転移の病理/神田浩明

はじめに

1 骨転移を起こす癌と鑑別診断

2 骨の反応からみた骨転移の分類

3 骨転移形成のメカニズム

4 何が破骨細胞を活性化させるのか

5 骨転移の治療と病理

おわりに


Chapter 3 骨転移の成立・進展のメカニズム

1 骨転移の成立

―1.癌の進展と血流循環性腫瘍細胞/播種性腫瘍細胞との関連―/米田俊之

はじめに

1 Curculating tumor cells(CTC)の検出

2 Disseminated tumor cells(DTC)の検出

3 CTCとDTCの生物学的特性

4 CTC/DTCの臨床的意義,有用性

おわりに

―2.骨髄の造血微小環境―

~造血幹細胞ニッチを形成する細胞たち~/長澤丘司

はじめに

1 骨髄のストローマ細胞

2 造血幹細胞ニッチ

おわりに

―3.上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition;EMT)と骨転移―/田中宗一・波多賢二・米田俊之

はじめに

1 EMT

2 癌と微小環境のクロストーク

おわりに

2 骨微小環境と癌幹細胞ニッチ/高倉伸幸

はじめに

1 骨髄微小環境と幹細胞ニッチ―骨芽細胞ニッチと血管ニッチ

2 癌幹細胞ニッチ

3 癌細胞の転移とニッチ

おわりに

3 骨転移の増殖・進展メカニズム

―1.乳癌細胞の進展とメカニズムとRANKL―/中島友紀

はじめに

1 乳腺の成熟を司るRANKL/RANK

2 乳腺幹細胞を制御するRANKL/RANK

3 乳癌の発症を制御するRANKL/RANK

4 癌の骨転移を制御するRANKL/RANK

おわりに 

―2.肺癌/矢野聖二・佐野峻子・竹内伸司・埴淵昌毅

1 臨床的問題

2 肺癌骨転移の動物モデル

3 小細胞肺癌株による骨転移のメカニズム

4 非小細胞肺癌株による骨転移のメカニズム

5 臨床における肺癌骨転移治療の現状

おわりに

―3.前立腺癌/成田伸太郎・羽渕友則

はじめに

1 骨転移増殖・進展の機序

2 注目される関連病態

おわりに

―4.多発性骨髄腫/安倍正博

1 骨髄腫骨髄微小環境

2 破骨細胞による骨髄腫細胞の生存・増殖の促進

3 骨髄間質細胞による骨髄腫細胞の生存・増殖の制御

4 骨髄腫における血管新生

おわりに

4.骨転移の骨病変形成メカニズム

―1.乳癌―/波多賢二・田中宗一・米田俊之

はじめに

1 転移のメカニズム

2 癌細胞と骨微小環境の相互作用

おわりに

―2.前立腺癌の造骨性病変―/植村元秀・野々村祝夫

1 骨転移の分類

2 骨リモデリング

3 癌転移のメカニズム

4 前立腺癌による造骨性骨転移のメカニズム

おわりに

―3.多発性骨髄腫―/安倍正博

1 骨髄腫骨病変形成の分子機構~骨吸収促進因子~

2 骨髄腫骨病変形成の分子機構~骨形成抑制因子~

3 骨髄腫骨病変形成の分子機構~骨細胞~


Chapter 4 骨転移の症候

1 骨転移と骨折(病的骨折)/眞鍋 淳

はじめに

1 骨転移による骨折(病的骨折)とは?

2 好発部位

3 原因

4 症状

5 診断における注意点

6 合併症

7 骨折の対応

8 病的骨折リスク評価

9 望ましい診療アルゴリズム

10 病的骨折の予防は可能か?

2 脊椎転移と脊髄麻痺/大島和也・荒木信人

1 脊椎転移とは?脊髄麻痺とは?

2 なぜ立ち向かう必要があるのか?

3 どれくらいの頻度なのか?

4 どのような症状が出るのか?

5 脊椎転移か否か?

6 どのように対応するのか?

7 これからの課題は?

3 高カルシウム血症/竹田 秀

はじめに

1 悪性腫瘍に伴う高Ca血症の病態

2 高Ca血症の徴候,症状

3 高Ca血症の鑑別

4 悪性腫瘍に伴う高Ca血症の治療

おわりに

4 骨転移による疼痛の分子メカニズム/中西雅子・波多賢二・米田俊之

はじめに

1 癌性疼痛の研究における動物モデル

2 骨組織の神経分布

3 疼痛の伝達経路

4 癌による疼痛発症のメカニズム

おわりに


Chapter 5 骨転移の診断

1 X線・核医学検査

―1.単純X線診断―/菊池光洋・江原 茂

1 X線撮影の適応と限界

2 通常の転移性骨腫瘍の所見

3 非定型的骨転移

4 原発巣・転移巣の分布

―2.CT―/山口哲治・川原康弘・上谷雅孝・伊東昌子

1 CTの特徴と骨転移の診断における役割

2 骨転移のCT所見

3 鑑別疾患

4 化学療法,放射線療法後のCT所見

―3.MRI―/福田健志・川上 剛・佐久間亨・福田国彦

はじめに

1 骨転移診断におけるMRIの利点と欠点

2 MRIの撮像法

3 正常骨髄のMRI所見

4 転移性骨腫瘍のMRI所見

5 脊椎圧迫骨折の良悪性の鑑別

6 放射線照射後の治療効果判定

おわりに

―4.骨シンチグラフィー/曽根照喜・吉川邦彦

はじめに

1 放射性医薬品

2 検査方法

3 骨転移のシンチグラムの特徴

4 骨転移検索における適応

おわりに

―5.PET/CT―/堤千寿子・高橋俊二

1 PET/CTについて

2 各がん種別の骨転移の頻度

3 骨転移の分類と特徴

4 骨転移型と各モダリティの特徴

5 PET/CTの精度

6 骨転移の治療効果判定

まとめ

2 骨代謝マーカー/高橋俊二

1 骨転移の機序,治療

2 おもな骨代謝マーカーと骨転移

3 骨転移診断,治療における各骨代謝マーカーの意義

おわりに

3 骨転移への光イメージングの応用/疋田温彦・大嶋佑介・今村健志

はじめに

1 生物発光イメージング

2 蛍光イメージングの骨転移に関する基礎研究における利用

3 蛍光イメージングによる骨転移診断の臨床応用に向けての課題

4 骨転移巣に対する蛍光イメージングの臨床における意義


Chapter 6 骨転移の治療

1 薬物治療

―1.ビスホスホネート製剤/河野範男

はじめに

1 BPの基礎

2 骨転移に対する効果および抗腫瘍効果―前臨床を主に―

3 骨転移に対するBP製剤臨床試験

4 抗腫瘍効果の臨床での検証

5 BPの補助療法としての可能性

―2.抗RANKL抗体―/遠藤逸朗・松本俊夫

はじめに

1 デノスマブの基礎的検討結果

2 臨床検討結果

3 低Ca血症に対する留意点

おわりに

―3.顎骨壊死とその対応/浦出雅裕

1 薬物治療に関連した顎骨壊死(drug-induced osteonecrosis of the jaw)

2 臨床症状

3 発現頻度

4 発症のメカニズムと危険因子

5 BRONJの予防

6 BRONJのステージ分類と治療方針

7 BRONJの治療成績

8 BP製剤治療における医療連携

2 放射線治療―骨転移に対する放射線治療/余田栄作・平塚純一

1 疼痛緩和

2 脊髄圧迫の改善・予防

3 病的骨折の予防

4 特殊な照射方法

5 有害事象

おわりに

3 外科的治療

―1.脊椎転移/村上英樹・加藤仁志・土屋弘行

1 手術適応

2 手術術式

3 新しい根治手術

4 今後の展望

―2.四肢骨・骨盤転移―/山本憲男・土屋弘行

はじめに

1 手術の判断

2 四肢骨転移の手術療法

3 骨盤骨転移の手術療法

おわりに

4 ホルモン療法に伴う骨病変とその治療

―1.乳癌―/金 昇晋・野口眞三郎

はじめに

1 乳癌に対するホルモン療法

2 ホルモン療法による骨密度低下と骨折リスク

3 ホルモン療法に伴う骨粗鬆症への対応

おわりに

―2.前立腺癌におけるCTIBL―/鈴木和浩

はじめに

1 前立腺癌に対するホルモン療法と骨量減少

2 骨量減少の評価

3 前立腺癌および乳癌における骨粗鬆症のスクリーニングと治療に関するガイドライン

4 ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドラインからみたCTIBL

5 CTIBLに対する治療

6 CTIBLに対するデノスマブの役割

おわりに

5 骨転移患者のリハビリテーション/安部能成

はじめに

1 癌骨転移と医学的リハビリテーションの関連性

2 がん治療に起因する障害

3 二次的障害

4 癌を担った人に生起する心理的障害

おわりに

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