PETという言葉は,「各種早期癌発見に,一度の検査でわかる」との謳い文句で,がん検診に使いだされ,知名度が広まりました。札幌でも,某病院が最初は無料で検査をおこない,近くの地下鉄トイレは放射能に汚染されているという噂話があったようです。
その後PETは,患者さんも含め一般の人に知られるようになり,腫瘍マーカーが上昇し,CTなどで再発がはっきりしない時など,患者さんや家族にその旨をお話しますと“なぜPETをやらないのか?”と尋ねられることが増えてきました。
その頃,私の北大の同級生である辻井博彦先生(当時放射線医学総合研究所<千葉県>重粒子医科学センターセンター長)から,「PET/CTは素晴らしい診断能である」ことを知らされました。しかし,F-18FDG製造装置であるサイクロトロンには,耐用年数が過ぎた際の処理など未解決の問題があり,処理法が確立されるまで当院では導入はしない方針としました。
2005年,検査薬のF-18FDGをデリバリーする日本メジフィジックス株式会社のPETラボが当院の近くにできることになり,当院はPET/CTの導入を決め,2006年1月より稼動しています。幸いなことに私の専門とする食道癌も保険対象となり,現在食道癌はPET検査件数の多い疾患の一つです。
この度,当院の伊藤和夫放射線画像センター所長から,各臓器の担当者が癌診療におけるPET/CTの位置づけについて分担執筆することで本を出す話がありました。症例数も増えてきましたので,その成績をまとめる必要があり,自分たちのデータから癌診療におけるPET/CTの評価をすることにしました。
実際の臨床の現場では,PETの診断能に感激することも多々ありましたが,一方リンパ節転移など抽出できず,落胆することもあります。
私は癌の診断はもちろん,食道癌などに対する抗癌剤,放射線治療後の効果判定に大きな期待を寄せています。現実にはまだまだ難しい面があり,新たな課題を与えられたと思い,伊藤所長とも取り組んでいるところであります。
今後PETの進歩は大きく期待される分野ですが,我々も共に進歩するよう努力していきたいと思います。
(細川正夫「PET/CTについて~監修者より~」)
第1章 総論
・総論/伊藤和夫
第2章 臨床応用
Ⅰ.頭頸部腫瘍
Ⅰ-A.頭頸部癌/渡邉昭仁/谷口雅信
Ⅰ-B.口腔癌/林 信/山下徹郎
Ⅱ.消化器
Ⅱ-A.食道癌/伊藤和夫/細川正夫
Ⅱ-B.胃癌/西田靖仙
Ⅱ-C(1).肝腫瘍/鐘ヶ江香久子
Ⅱ-C(2).膵癌・胆道癌/西田靖仙
Ⅱ-D.大腸癌/久須美貴哉
Ⅱ-E.腹膜播種,その他腹腔内・骨盤腔内腫瘍/久須美貴哉
Ⅲ.呼吸器
Ⅲ-A.肺癌(小細胞癌/非小細胞癌)/山崎成夫
Ⅲ-B.縦隔腫瘍・胸膜腫瘍/鐘ヶ江香久子
Ⅳ.乳癌/鈴木康弘
Ⅴ.血液(悪性リンパ腫)/平野貞一
Ⅵ.原発不明癌/伊藤和夫/鐘ヶ江香久子
第3章 PET装置の動向
・Time of Flight/望月孝史
・(付録)FDG-PETに関する診療報酬について(抜粋)