持続性の破壊性関節炎を特徴とする関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)は,無治療のまま放置すれば10年後には高度の身体機能障害に至るとされ,生命予後も3~17年短いと報告されている。その治療は,これまで対症的治療に終始し,機能的予後,生命予後の改善につながる治療は存在しなかった。しかし,そのようなリウマチ治療にブレークスルーが起こった。RAの分子病態が解析され,腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor: TNF)やInterleukin-6(IL-6)などの炎症性サイトカイン分子が,RAの病態形成において中心的役割を果たしていることが明らかとなったのである。それらに対する生物学的製剤が次々と生み出され,従来の治療薬にない驚くべき臨床的効果,関節破壊抑制効果が報告されたのは,20年前にもさかのぼる。現在,生物学的製剤は,リウマチ治療指針のなかで確固たる位置を占めている。さらに,異なる標的に対する製剤,完全ヒト抗体,半減期を長くした修飾抗体など,新しい生物学的製剤の臨床開発は留まるところを知らない。
生物学的製剤は,RA治療にパラダイム・シフトと呼ばれる大変革をもたらし,今や,その知識や経験はリウマチ診療において欠かせないものとなっている。
本書は,生物学的製剤の基礎から実地臨床に至る広範な領域について,各著者がポイントを絞って判り易く解説して下さっている。生物学的製剤に対する知識の整理や実地診療において御活用戴ければ幸いである。
(竹内?勤「序文」より)
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Chapter 1 生物学的製剤の薬理作用
1.薬理作用(生物学的製剤とは?)
1.標的
/1.炎症性サイトカイン /2.T細胞 /3.B細胞
2.構造と作用
3.薬物動態
Chapter 2 RAの病態と症状
1.生物学的製剤の標的分子からみたRAの病態
1.サイトカインネットワーク
/1.TNFおよびLymphotoxin /2.IL-6 /3.IL-1およびIL-1スーパーファミリー分子 /4.IL-17 /5.IL-12,23,27 /6.IL-4,7,9,15,21
2.T細胞とRA
3.B細胞とRA
4.破骨細胞とRA
2.RAの症状(診断の参考となる症状,病初期から晩期に至るまでの症状の推移,関節外症状など)
1.RAの臨床経過
2.RAの症状(早期)
3.RAの症状(後期)
4.関節外症状
5.診断・活動性評価に有用な症状
3.RAの評価
1.治療の考え方
2.臨床的活動性評価
3.X線画像評価
4.身体機能評価
5.寛解の定義と評価間のギャップ
Chapter 3 RAの治療戦略(生物学的製剤の位置づけ)
1.治療の考え方
1.早期の治療(early treatment)
2.積極的な治療(aggressive treatment)
3.客観的指標を用いた厳密な管理(tight control)
2.早期症例に対する治療戦略
1.なぜ早期診断,生物学的製剤による治療介入が必要か?
2.早期RAに対する生物学的製剤導入のアルゴリズム
3.早期治療介入による寛解導入とバイオフリーの可能性
3.MTX不応例に対する治療戦略
4.生物学的製剤不応症例に対する治療戦略
1.TNF阻害療法が無効であった場合の治療戦略
/1.増量すること,投与間隔を短縮すること /2.併用薬を変え抵抗性を解除する /3.ほかのTNF阻害薬に変更する /4.TNF阻害療法が無効であった場合のIL-6阻害薬トシリズマブへの変更 /5.治療抵抗性症例に対する治療戦略。新規治療法の可能性
Chapter 4 ガイドライン(改訂)
1.ガイドライン(改訂)
1.本邦の生物学的製剤使用ガイドライン
2.TNF阻害療法ガイドライン(改訂版)
/1.作成の目的 /2.対象患者 /3.投与禁忌 /4.要注意事項
3.アダリムマブ使用ガイドライン
4.トシリズマブ使用ガイドライン
/1.対象患者 /2.感染症 /3.炎症反応の抑制
5.欧米のガイドライン
6.ガイドラインの使用法
Chapter 5 Q&A(生物学的製剤の有効性)
1.生物学的製剤単独投与,抗リウマチ薬(MTX)の併用との使い分けのコツはありますか?
2.抗リウマチ薬との併用で注意することはありますか?
3.RAに伴う症状に対する効果は?(貧血・AAアミロイドーシスなど)
4.各製剤の国内における骨関節破壊防止効果のエビデンスはありますか?
5.各製剤の投与後の臨床検査値(CRP,MMP-3,RFなど)の推移は?
Chapter 6 Q&A(安全性全般)
1.製剤ごとの特徴的な副作用とその頻度について教えてください。
2.製剤ごとの感染症とその頻度について教えてください。
3.腎障害患者への投与で注意することはありますか?
4.結核既往患者に投与する際の注意は?
5.投与方法ごとの副作用について教えてください。
Chapter 7 Q&A(生物学的製剤の適応)
1.発症6カ月の高疾患活動性の27歳女性ですが,生物学的製剤は使えますか?
2.腫脹関節=2,疼痛関節=3,CRP=1.0ですが,日常生活はかなり不自由です。生物学的製剤は使えますか?
3.間質性肺炎を合併しているためMTXが使用できません。このような状況でも生物学的製剤は使えますか?
4.昨年,インフルエンザウイルス感染症にかかりました。生物学的製剤は使えますか?
Chapter 8 Q&A(安全性スクリーニングとその対応)
1.白血球減少,軽度肝機能障害のときの対応について教えてください。
2.呼吸器合併症のスクリーニング検査について教えてください。
3.現在感染症があるかどうかを見分けるコツは?
4.結核のスクリーニングはどのようにすればよいですか?
5.結核のスクリーニングはどのようにすればよいですか?
6.ウイルス肝炎のスクリーニングについて教えてください。
7.糖尿病のスクリーニングについて教えてください。
Chapter 9 Q&A(安全性モニタリングとその対応)
1.感染症のモニタリングには,どの検査をすればよいですか?
2.ニューモシスチス肺炎を予防するためには,何をモニタリングしたらよいですか?
3.有効性のモニタリングにはどの検査をすればよいですか?
Chapter 10 標準的な投与方法
1.インフリキシマブの投与方法
2.エタネルセプトの投与方法
3.トシリズマブの投与方法
4.アダリムマブの投与方法
Chapter 11 困ったときのTips
1.インフリキシマブが二次無効になったときの対処法を教えてください。
2.TNF阻害薬を導入して3ヵ月経過しますが,RAの活動性が低下しません。次の選択枝は?
3.生物学的製剤使用時の手術対応について教えてください。
4.結核の既往があり,イソニアジドの予防投与を開始しましたが,肝障害が出現しました。今後の治療方針は?
5.TNF阻害薬の皮下注射製剤で,有効性はみられていますが,皮疹が出現しました。どのように対処したらよいでしょうか?
Chapter 12 日本で得られたエビデンス
1.【後期第II相試験】
1.インフリキシマブ
2.トシリズマブ
3.STREAM試験(トシリズマブ)
4.CHANGE試験(アダリムマブ)
2.【第III相試験】
1.SAMURAI研究(トシリズマブ)
2.SATORI研究(トシリズマブ)
3.【臨床研究・第IV相試験】
1.RECONFIRM研究(インフリキシマブ)
2.RECONFIRM-2研究(インフリキシマブ)
3.RECONFIRM-2J研究(インフリキシマブ)
4.PAT研究(インフリキシマブ)
5.RRR研究(インフリキシマブ)
6.RISING試験(インフリキシマブ)
7.JESMR試験(エタネルセプト)
4.【全例市販後調査】
1.インフリキシマブ
2.エタネルセプト