2005年暮れ,2006年初頭,そして2007年春と,欧米では相次いで腎細胞癌に対する分子標的治療役が承認された。これにより high stage 腎細胞癌の治療法が大きく変化した。日本でも,まもなくこれらの薬剤が保険承認されることが期待されている。
このことは,腎細胞癌の治療の現場に,新たに有効な手段が加わることを意味する。しかし,一方で医療従事者には,より効果的にかつ安全にしようするための研鑽が課せられることをも意味する。
また,一般検診やドック検診の普及等で早期の微小腎細胞癌の発見頻度が急増している。さらに,鏡視下手術やマイクロ波,凍結療法など物理学的治療法の開発が加わり,腎細胞癌の治療体系全体が大きく変わろうとしている。このような状況下で,2007年に日本癌治療学会が腎がん診療ガイドラインを発表したことは的を射たものといえる。
今般,分子標的治療役が治療手段に加わるという情勢を鑑み,本ハンドブックを編集した。臨床の現場に手軽に携帯され,必要に応じてページを開いていただければ幸いである。
(赤座英之「序文」より)
第1章 腎細胞癌の診断
1. 総論
/1.診断の進め方 /2.問診,身体所見,臨床検査(尿検査,血液・生化学検査) /3.鑑別診断(鑑別すべき疾患)
2. 画像診断
/1.排泄性尿路造影 /2.腹部超音波検査 /3.腹部CT検査 /4.血管造影 /5.MRI /6.腎癌の病期診断 /7.嚢胞性腎癌
第2章 腎細胞癌の病期分類
1. 総論
/1.TNM分類 /2.Robson分類 /3.進行性腎細胞癌のリスク分類
第3章 腎細胞癌の治療
1. 腎細胞癌に対する手術療法
/1.根治的腎摘除術 /2.腎部分切除術 /3.経皮的局所療法 /4.体腔鏡下根治的腎摘除術の標準化
2. 免疫療法の特徴と限界
/1.サイトカイン単独療法 /2.サイトカイン併用療法 /3.転移期腎細胞癌の予後因子 /4.樹状細胞療法と同種造血幹細胞移植
3. 新しい薬物療法―分子標的治療の特徴と臨床応用
ソラフェニブ
/1.腎細胞癌の遺伝子異常 /2.ソラフェニブ /3.第I相臨床試験 /4.第II相臨床試験 /5.第III相臨床試験 /6.有害事象について /7.今後の検討課題
スニチニブ
/1.標的分子と作用機序 /2.第I相臨床試験 /3.第II相臨床試験 /4.第III相臨床試験 /5.有害事象について /6.付記
4. 進行性・転移を有する腎細胞癌の治療における腎摘除術の意義
/1.M1症例の腎摘除術の臨床的意義 /2.M1症例への対応
第4章 腎細胞癌治療の展望
1. 総論
/1.腎細胞癌治療の変遷 /2.腎細胞癌治療に必要な力 /3.日本の泌尿器科医の役割は