無症候性心筋虚血(asymptomatic myocadial ischemia/無痛性心筋虚血,silent myocardial ischemia :SMI )は虚血性心疾患の診療において極めて重要な病態であるにも関わらず,自覚症状を伴わないことも一因となって,一般臨床の場においては必ずしも十分には対応されていない現況が,本書を著すきっかけとなった。
(略)しかも,わが国は世界でも未曾有の高齢社会であり,その上世に言う団塊の世代が一大集団を形成して今後数十年にわたり加わるため,本症例の大量に発現する大変な状況に至ることが予想される。
このような現況に鑑み,SMI について,私どもの基礎および臨床研究も加味して,基礎から臨床まで全般にわたり,症候性心筋虚血である狭心症とともに,私なりの見方で概説した次第である。
(三浦?傅「序」より抜粋)
第 1章・虚血性心疾患の略史
第 2章・虚血性心疾患の分類とその推移
第 3章・虚血性心疾患を発症する冠危険因子
1. 高血圧症
2. 高脂血症
3. 糖尿病および耐糖能異常
4. 嗜好品としての喫煙と飲酒
5. メタボリックシンドローム
第 4章・急性冠症候群の病因・病態
1. 粥状硬化
2. 急性冠症候群(ACS)の病態
3. 粥腫の損傷・破綻を生じる機転と推移
4. 血栓形成とその推移
第 5章・狭心症
1. 分類の推移
2. 発症頻度および予後
3. 狭心症の診断
第 6章・一過性心筋虚血に対する心筋の対応
1. 心筋虚血侵襲に対する心筋の対応
2. 心筋虚血再灌流障害の発生機序
3. フリーラジカル
4. カルシウム過負荷(Ca2+過負荷)
5. 再灌流障害にかかわるその他の因子
第 7章・心筋の防御機転
1. 仮死心筋
2. 心筋虚血プレコンディショニング
3. 冬眠心筋
4. 冠副血行路
5. 冠血管系の対応:冠動脈硬化と冠血管リモデリング
第 8章・心筋虚血と狭心痛の発症機序
1. 狭心痛と交感神経のかかわり
2. 虚血侵襲に対する心筋および自律神経系の対応
3. 障害因子と保護因子
第 9章・無症候性心筋虚血の概念,定義および病態
1. 無症候性心筋虚血(SMI )の概念と定義
2. 病態生理
第10章・無症候性心筋虚血の発症頻度と予後
1. Cohn I 型
2. Cohn II 型
3. Cohn III 型
第11章・無症候性心筋虚血の診断
1. 検査法
2. 検査法の有用性と限界
3. 精神的ストレス負荷と最近の展開
4. 症例提示
第12章・狭心症および無症候性心筋虚血の治療
1. 薬物療法
2. 非薬物療法
第13章・無症候性心筋虚血に関する今後の展望