子どもの頃から,両親に「手に職をもて」といわれ続けて育ちました。6人兄弟の5番目で,大学まで進学したのは私だけ。医学部教授としてはちょっと異色かもしれませんね。
医師は,憧れの職業でした。いつの時代,どんなに混乱している社会であっても生命や健康維持は重視されます。それを担う医師は素晴らしい職業だと,今でも思っています。
卒業後,入局したのは消化器外科です。ラグビー部の先輩に誘われたのがきっかけですが,医師として経験を積むなか,自分には精神科医が向いていると考えるようになりました。精神疾患は,目に見える病巣があるわけでない,得体の知れない存在です。そこに立ち向かうことや,人の話をじっくり聞くことが好きな私の好奇心が,精神科への転向を後押ししました。