肝内胆管癌は,肝臓に発生する悪性腫瘍のなかで2番目に多く,その発症率や死亡率は近年増加傾向にある。肝内胆管癌とは,その名の通り,肝臓内で胆管を形成する胆管上皮細胞から発生する悪性腫瘍と定義されており,ウイルス性肝炎に起因する肝細胞癌とは異なり,その発症原因は不明で,放射線療法や化学療法による治療効果は低く,肝切除が唯一の治療法ともいえる。そのため,一般的に予後不良なケースが多く,腫瘍を完全に切除できた場合でも5年生存率が40%程度,切除できなかった場合は10%にも満たないのが現状である。病理学的所見において,管状もしくは袋状の形態を有する偽胆管構造の増加が顕著であることが,肝内胆管癌が胆管上皮細胞に由来することを示す根拠の1つになっている。しかしながら,この仮説を科学的に検証した例はこれまでにない。臨床的にみて,ウイルス性肝炎の患者にも肝内胆管癌の発生がしばしばみられることから,肝内胆管癌が肝細胞の形質転換に由来する可能性も排除できない。このように,肝内胆管癌の研究はあまり進んでおらず,その起源となる細胞も特定できていない。肝内胆管癌の起源やその発症機構が明らかになれば,治療の難しい肝内胆管癌を初期検診で見つけ出すための技術開発や,これまでにないまったく新しい概念に基づいた治療法の開発が期待できる。
本稿では,肝内胆管癌の起源やその発症機構の解明に向けた研究のなかで,われわれの研究から得られた知見について概略する。