急性呼吸不全をきたす背景疾患は実に多彩であり,①気道・肺疾患,②肺胞への血流障害,③胸膜疾患,④心疾患,⑤その他が挙げられる.急性呼吸不全の呼吸管理を行う際には,これらの基礎疾患の特性を考慮したうえで実施する必要がある.急性呼吸窮迫症候群(ARDS)では肺保護換気法が重要であるが,最適一回換気量,オープン・ラング・アプローチ,自発呼吸温存,早期リハビリの意義については再考の余地がある.間質性肺炎では従来,人工呼吸の適応はないと考えられていたが,近年は人工呼吸による生存率改善が認められている.閉塞性肺疾患では,エアートラッピング,内因性呼気終末陽圧による圧損傷の発生に注意を要する.経肺圧などの新たなモニタリングシステムは,最適な呼吸管理法を考慮するうえで,有用な指標となる可能性がある.
「KEY WORDS」最適一回換気量,オープン・ラング・アプローチ,自発呼吸,早期リハビリ,経肺圧