Summary  血管平滑筋の収縮弛緩のメカニズムは,カルシウムシグナルによるミオシン軽鎖のリン酸化で説明されてきたが,カルシウムシグナル以外の制御機構として低分子量GTP結合タンパク質Rhoとその標的分子であるRho-キナーゼの経路が同定された。その後,Rho-キナーゼの特異的な阻害薬を用いることで,Rho-キナーゼが冠動脈攣縮や脳血管攣縮の血管過収縮状態などさまざまな病態に関与していることが示されてきた。昨今では,肺高血圧症においても,このRho-キナーゼの関与が明らかとなり,Rho-キナーゼ阻害薬が新たな肺高血圧症(PH)の治療薬として注目を集めている。本稿では,PHにおけるRho-キナーゼ依存性病態メカニズムについて概説し,その阻害薬のPH治療薬としての可能性について言及していく。