糖尿病が慢性多臓器障害の原因となることは論を俟たないが,長期間の管理が可能となり,また寿命が長くなったことにより,より長期間の慢性合併症にも注意を払う必要が増してきた。その1つが,骨粗鬆症性骨折の増加である。糖尿病患者での骨脆弱性の進行の原因としては,転倒,低骨代謝回転,糖化終末産物(advanced glycation endproduct:AGE)のコラーゲン架橋へ蓄積,骨量減少速度の増加,骨形態(ジオメトリー)の変化などが想定されているが,単一の原因にすべての説明を求めることはできない。明確なのは,他の糖尿病合併症同様に,血糖コントロールの悪化と経時的なAGEの蓄積が骨の臓器障害を引き起こし,具体的な臨床的イベント(脆弱性骨折)のリスク増加につながるという事実である。
「key words」サルコペニア,骨粗鬆症,骨代謝回転,ビタミンD,転倒