植込み型ブレインマシンインターフェースによる機能再建
はじめに
ブレインマシンインターフェース(brain machine interface:BMI)とは、脳信号から意図を解読して思い通りに機器を操作する技術である。BMIには図1に挙げるようにさまざまな計測方法がある。頭蓋内に電極を留置するタイプは、植込み型BMIと呼ばれ、正確な脳信号を計測できるので、生活に有用なレベルで機器が操作でき、身体障害者の機能再建技術として期待されている。本稿では、植込み型BMIについて概説する。
最も重要なのは脳信号を精密に長期安定に計測すること
BMIで生活に有用なレベルで機器を操作するためには、脳信号に含まれる機器操作の意図をどれだけ瞬時に精密に計測できるかが、最も重要となる。
図1に現在BMIに主に用いられている計測方法を挙げる。まず、脳内針電極は脳実質内に微小な針電極を多数刺入する方法である。イーロン・マスクが設立した会社が本年の1月から臨床試験を開始し、注目を集めている。この方法は脳活動の最小単位ともいえる神経細胞の発火活動が計測できるため、最も精密な計測が可能である。しかし、非常に繊細な計測となるため、日々計測できる発火活動が変化する。そのため、頻回にそのときに計測できる脳活動のパターンを人工知能に学習させてパラメーター設定をやり直す必要があり、患者がスイッチオンですぐに利用できるというわけにはいかない。また針電極周囲に慢性的に炎症反応が生じて、電極が結合組織に覆われて、計測性能が徐々に低下する。
われわれが採用する脳表電極は、電極が多数配置されたシートを脳表面に置く方法である。この方法は、脳波を脳表面から直接計測するため、極めて精密な脳波を計測できる。針電極には及ばないが、電極間隔を小さくすると神経活動の最小機能単位まで計測性能を上げることができる1)。硬膜下に電極を留置するため、炎症反応もほとんど生じず、長期間安定して精密な脳波が計測できる2)3)。
血管内電極は、静脈洞など頭蓋内の太い血管内に電極を留置する方法である。この方法は、血管内アプローチにより電極を留置するため、前二者と異なり、開頭手術が不要である。しかし、静脈洞内など、電極を留置できる位置が血管内に限定されるため、至適位置に電極を置くことは原理的にできず、手術を必要とする割には、高い性能を実現しにくい。また、長期的抗血小板剤の内服により出血リスクが増大し、電極やそのリード線は血管壁内に埋没するため、抜去は不可能となる。
頭皮電極は、一般的な脳波計測と同様に頭皮に電極を貼付して脳波を計測する方法である。廉価で侵襲がないため、利用しやすく、多くの企業がブレインテックとしてこの分野に参入している。しかし、脳波は骨や皮膚により、減衰し、非線形に歪み、さらに交流電源などの外部ノイズや筋電ノイズのため、BMIにおいて最も重要な脳信号の質が低いという致命的な欠点がある。こうした脳信号の質の問題は、フィルターや信号推定の技術では補いきれないものであり、現時点では頭皮脳波だけで生活に有用なレベルの機能再建を実現することは難しいというのが一般的になりつつある。


