近年,造血器腫瘍における薬物治療の進歩は目覚しいが,中でも慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia; CML)治療薬には目を見張るものがある。
いうまでもなくそれはチロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor; TKI)・イマチニブの登場に始まったわけであるが,その進歩は次世代TKIの登場・新規作用機序の薬剤開発へと更なる広がりを見せており,いまなお日常診療を大きく変えようとしている。
本書はその中でも『ダサチニブ(スプリセル?)』にフォーカスを当てて解説したものである。ダサチニブの基礎データ/臨床成績/服用における注意点/ダサチニブ投与のための院内整備/ダサチニブ投与の実際/ダサチニブの今後の可能性について,それぞれ第一線の先生方にご執筆頂いた。
この領域は分子生物学的知見がほぼそのまま臨床に直結する希有な領域であり,日々長足の進歩を遂げている。ダサチニブについても,免疫調節作用やCNS白血病への効果などについてすでに新しい知見が出てきており今後の展開が期待される薬剤である。
そうした中で,標題通り「ダサチニブ」について多角的に述べられた充実した内容となっている本書が,日々多忙な先生方の一助になれば幸いである。
(直江知樹「序」より)
はじめに
CML治療の現状
/1.CMLとは /2.CML治療の変遷 /3.イマチニブ時代 /4.イマチニブ時代からポスト・イマチニブ時代へ
ALL治療の現状
/1.治療成績 /2.今後の治療戦略
第1章 ダサチニブの基礎データ
/1.チロシンキナーゼ阻害のメカニズム /2.ダサチニブの開発経緯 /3.ダサチニブの特性 /4.ダサチニブの作用機序 /5.ダサチニブの薬物動態
第2章 ダサチニブの臨床試験―1st lineにおける有効性と2nd line,3rd lineにおける有効性―
/1.1st lineにおける有効性 /2.2nd line,3rd lineにおける有効性 /3.ダサチニブのCML幹細胞に治する効果
第3章 ダサチニブ服用における留意点
/1.服用前の留意点 /2.服用時の留意点 /3.服用中の留意点
コラム: インフォームドコンセントにおける留意点
第4章 各施設におけるダサチニブの実臨床
院内整備・副作用対策編
愛知県がんセンター中央病院
/1.ダサチニブ投与のための院内手順 /2.患者さんへの対応 /3.副作用対策
症例編
/症例1.日本赤十字社医療センター・CML慢性期におけるニロチニブからの切り替え例 /症例2.広島市安佐市民病院・CML慢性期におけるイマチニブレジスタンスからの切り替え例 /症例3.長崎大学病院・CML慢性期における切り替え例 /症例4.大阪市立大学・CML慢性期における切り替え例 /症例5.自治医科大学・CML APからの切り替え例 /症例6.兵庫医科大学・ALL多剤からの切り替え例 /症例7.川崎医科大学・ALL多剤からの切り替え例
第5章 ダサチニブの臨床応用と今後の展望
小児CMLに対するダサチニブの投与方法
/1.臨床試験の概要 /2.小児CMLにおける投与方法 /3.内服時の留意点
移植に対する処方経験
/1.症例 /2.移植後経過 /3.考察
CML幹細胞に対するダサチニブの効果
/1.慢性骨髄性白血病の進展とその治療におけるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の位置づけ /2.CML幹細胞は,変異によりサブローンを増やす /3.CML幹細胞を体内から根絶するためには
その他の造血器腫瘍への応用(AML/MM/Lymphoma)
/1.AMLに対するダサチニブ /2.MMに対するダサチニブ /3.Lymphomaに対するダサチニブ
資料 ※CD-ROM資料(PDFもしくはWORD)
/1.decision tree(慢性骨髄性白血病) /2.化学療法計画書(カルテ用・患者さん用) /3.ダサチニブ投与前評価リスト /4.ダサチニブ投与後の来院・検査スケジュール /5.同意書・説明書(慢性骨髄性白血病‐慢性期用) /6.副作用と注意点について(患者様向け) /7.スプリセル服用時の副作用マネジメント(看護師向け) /8.スプリセル服用時の副作用マネジメント(薬剤師向け) /9.ASCO2010 DASISION試験(第III相試験)