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Special Articles

基礎 泌尿器科医が知るべき放射線治療の原理

石川仁

ESPOIR Vol.5 No.1, 15-20, 2022

放射線治療の成功のためには正常組織の重篤な障害を避けつつ病変に対して十分に腫瘍制御が可能な線量を投与することが必要であり,“治療可能比”を高めることが重要である。“治療可能比”とは放射線腫瘍医が日常臨床を行うための最も根本的な概念であり,有害事象となるリスク臓器の耐容線量と腫瘍制御に必要な線量の比であるが,高精度の照射技術を用いて正常臓器の照射体積を減ずることでリスク臓器の耐容線量を高め,化学放射線療法に代表される薬物療法を併用することで放射線感受性を高めて局所効果を増強する試みが行われてきた。
この治療可能比を高めるために,前立腺癌の放射線治療における新たなアプローチとして寡分割照射が注目されている。現在,分割線量が4Gy程度までの寡分割照射が標準的な線量分割の1つとして広く普及している。分割線量を増加させることはリスク臓器の耐容線量を減じて有害事象のリスクを高めることになるが,前立腺癌は周囲の組織よりも分割線量の増加に敏感であり,分割線量の増加が病変に対する治療効果を極端に高める作用を有するためである。最近では5Gyを超える線量分割を用いて数回で治療が完結する定位照射も登場し,前立腺癌に対しても保険収載されるに至った。このように,放射線治療において用いられる線量分割法は,疾患や部位,あるいは併用療法の有無やタイプによって異なるだけでなく,照射部位や治療法がほぼ同一である前立腺癌であっても多彩である。
本稿では,放射線治療における治療可能比の概念と,放射線腫瘍医が分割線量や総線量を決定する際に照射効果を予測する生物学モデルについて解説したい。
「KEY WORDS」放射線腫瘍学,治療可能比,直線‐二次曲線モデル,前立腺癌,寡分割照射

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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