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特集 食品安全の最前線―感染症の観点から―

1.食中毒細菌,特にサルモネラと腸炎ビブリオについて

村上光一

感染制御と予防衛生 Vol.3 No.2, 4-14, 2019

食中毒の原因(病因)は,病原体によるものと,非病原体によるものに分類することができる.病原体によるものは,病原体の種類により,細菌性,ウイルス性,寄生虫性などに分類できるが,より本質的な分類は,感染(侵入)型,感染毒素型,食品内毒素型の3分類である.感染(侵入)型は摂食者の口から病原体が取り込まれ,腸管に到達し,組織障害を惹起して下痢などの症状を招くものである.感染毒素型は病原体が感染してから毒素が宿主の腸管内で産生され,宿主の組織の障害などが起こり,下痢などが起こる.食品内毒素型は食品中で増殖した病原体が食品内で毒素をあらかじめ産生して,それを宿主が摂食して起こる食中毒である.
食中毒を起こす細菌は,比較的ゲノムサイズの大きな細菌である.ゲノムサイズの大きな細菌は,宿主域が広く,病原性関連遺伝子を多く取り込み,環境での生存にも適応していることが多い.病原大腸菌による食中毒事例にて最も高額な補償が支払われている.サルモネラの特徴のひとつはその宿主域の広さと,環境での生き残り能力の高さである.サルモネラの無機物表面での生存時間は長く,数年にわたることもある.宿主域は脊椎生物のみでなく,昆虫,植物に及ぶ.腸炎ビブリオはもともと環境細菌である.腸炎ビブリオのうち食中毒を起こすのは,耐熱性溶血毒(TDH)あるいは耐熱性毒素関連溶血毒(TRH)を産生する菌株のみである.本菌による食中毒の発生には,ある程度の菌数が一度に摂取されることが必要であり(10⁴-10¹⁰ CFU g⁻¹),発育増殖にはある程度の食塩濃度(1%~8%)が必要である.腸炎ビブリオは増殖の早い細菌のひとつとしても知られ,至適培養条件下ではおよそ10分間に1回の割合で分裂する.食中毒の病原(病因)物質を理解することは,食中毒予防のために重要である.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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