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美容皮膚科に必要な外科的Option & Technique

第15回 液体窒素療法で生じた炎症後色素沈着

山下理絵

Bella Pelle Vol.5 No.3, 54-56, 2020

液体窒素療法は古くからある治療で,マイナス196℃の液体を綿棒などに染み込ませ,患部に圧締して,冷却する治療法である.尋常性疣贅などのウイルス性疾患に対して行われる.
また,顔面の脂漏性角化症,老人性色素斑や頸部のアクロコルドンなど,見た目を改善する治療にも用いられている.しかし,他院において顔面に行った液体窒素療法で,濃い色素沈着を生じ受診される方もいる.
筆者は顔面の脂漏性角化症などの隆起性病変の治療を検討する場合,液体窒素あるいは手術による切除などの保険治療,レーザーによる自費治療を説明する.各治療の利点欠点を説明し患者に選択してもらうことが多い.液体窒素療法を行う場合は,美容的意味合いが大きいことを医師が理解して行い,患者への説明も,炎症後色素沈着(post inflammatory hyperpigmentation;PIH)を含め十分に行う必要がある.
しかし,病変より大きな綿棒による圧締,および頻回の治療により,PIHを起こして別のクリニックを受診する症例は多い.隆起性病変が除去できれば満足される場合もあるが,跡形もなく消えると思って治療を受けている人,尋常性疣贅と同様に回数を重ねれば除去できると思っている人もいる.筆者は,女性患者に対しては全例,スキンケアを含めた自費診療を薦めている.男性でも多発している場合は美容的治療であることを説明し自費診療を行うことが多い.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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