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タイプ別肺高血圧症診療のポイント

分子標的薬と肺高血圧症診療のポイント

久保田香菜

Pulmonary Hypertension Update Vol.8 No.1, 50-53, 2022

まず前提として,現在日本国内で肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)について保険収載された分子標的薬は存在しないことを明記する。本稿で述べる分子標的薬はあくまで保険適応外での使用であり,患者へのインフォームドコンセント,施設内の倫理委員会の承認を得て投与されたものである。
腫瘍血栓性微小血管症(pulmonary tumor thrombotic microangiopathy:PTTM)は悪性腫瘍に合併する致命的なPHで,von Herbayらによって1990年にはじめて報告された1)。急激に悪化する呼吸不全が特徴で,数時間~数日で死に至ることが知られており,原発巣としては胃癌,肺癌,乳癌などが報告されている。詳細な病態は明らかではないが,①転移性腫瘍細胞による肺末梢動脈の物理的塞栓,②腫瘍細胞による凝固能活性化→微小血栓形成,③塞栓した腫瘍細胞による血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)や血小板由来増殖因子(platelet derived growth factor:PDGF)などの異常発現→肺動脈血管内膜の線維細胞性増生,内腔狭窄などが関与していると考えられている2)。近年,PDGF受容体−チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブがPTTMによる劇症型PHを改善させたという症例が,日本から数例報告された3)-6)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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