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よくわかる病理診断報告書

Q25 浸潤性小葉癌の亜型について教えてください/Q26 被包型乳頭癌について教えてください

森谷卓也稲吉貴絵松野岳志

CANCER BOARD of the BREAST Vol.7 No.1, 28-31, 2022

「Q25 浸潤性小葉癌の亜型について教えてください」
浸潤性小葉癌は特殊型乳癌の一型で,本邦では乳癌全体の4~5%を占める組織型です。定型的には細胞相互の結合性(接着性)が低下した癌細胞が,膠原線維性間質内に細い索状構造を呈し浸潤します。間質反応が乏しく,既存の乳管を取り残しながら浸潤する像(乳管周囲に同心円状の配列を示すtargetoid pattern),細胞質内の分泌物質(細胞質内小腺腔)なども特徴のひとつです。免疫組織学的にはLuminal A型が多く,E-cadherinは通常陰性です。臨床的には通常の浸潤性乳管癌と予後に差はありませんが,多中心性発生,両側発生の頻度が高いこと,晩期再発例があること,軟髄膜や腹腔内(消化管,腹膜,子宮,卵巣)への転移があることなどが特徴とされています。病巣内には小葉内腫瘍(非浸潤性小葉癌~異型小葉過形成)も混在します。

「Q26 被包型乳頭癌について教えてください」
被包型乳頭癌(encapsulated papillary carcinoma)は,WHO分類第4版(2012年)で新たに提唱された乳癌の特殊型です。最新の第5版(2019年)にも収載されていますが,日本の乳癌取扱い規約には未だ導入なされていません。線維性被膜に囲まれた嚢胞状病巣内にみられる乳頭状の癌で(図1),なおかつ嚢胞状構造の辺縁部および乳頭状構造をなす線維血管性間質に沿った部位に筋上皮細胞の介在が明らかではない病変を指します。通常は軽度から中等度の核異型を有します。単なる嚢胞内乳頭状癌とは異なる特徴を有する癌の組織型です。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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