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Evidence Explanation

抗うつ薬の最適使用戦略を確立するための多施設共同無作為比較試験

渡辺範雄

精神科臨床 Legato Vol.5 No.1, 44-45, 2019

従来,副作用やコスト,患者さんの好みなどによって抗うつ薬が選択されてきましたが,STAR*D study1)やMANGA study2)といった大規模研究の結果を受けて,現在うつ病の薬物療法は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor;SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor;SNRI),ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant;NaSSA)に代表される新規抗うつ薬が中心となっています。
しかし薬物療法の開始にあたって,抗うつ薬の初期の目標投与量をどう設定するか,治療反応が不十分な場合にいつ・どのように治療を変更(増量・変薬・増強)するか,十分な実践的エビデンスはありませんでした。ファーストラインで最大投与量まで増量する治療戦略は多くのガイドラインで推奨されていますが,標準投与量の下限を狙う戦略よりも本当に効果と安全性で優れているのでしょうか。さらに,いつセカンドラインに切り替えるのが適切かを検討したランダム化比較試験(randomised controlled trial;RCT)は存在せず,海外のガイドラインでは4~8週3)などと推奨はされているものの,そのエビデンスは十分ではありません。つまり,これらの臨床疑問は日常臨床で頻繁に遭遇し,患者の日常生活に直結するものであるにもかかわらず,これまで信頼に足る薬物治療指針がないままになっていたのです。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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