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Column コラム

補体欠損と髄膜炎菌感染症

川口辰哉

PNH Frontier No.5, 40-43, 2018

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)はグラム陰性双球菌であり,通常は病原性にかかわる多糖体の莢膜を有する。多糖体の抗原性により,13種類の血清群に分類されるが,病原性が高いのはA,B,C,X,Y,Wの6群のみである。髄膜炎菌はヒトのみを宿主として鼻咽頭に定着し,飛沫感染によりヒト─ヒト感染を起こす。感受性のある宿主は髄膜炎や菌血症などいわゆる侵襲性髄膜炎菌感染症(invasive meningococcal disease;IMD)を発症し,特に24時間以内に急激に悪化する急性劇症型は致死率が高い。IMD発症は1歳未満にピークがあり,20歳前後の思春期~青年期にも好発し,濃厚接触の頻度が高い集団でアウトブレイクすることも知られている。髄膜炎菌の感染防御には補体の役割が重要であり,特にC5以降の終末補体反応が阻止されると感染のリスクが高まり,先天性補体欠損症では通常の7,000~1万倍1),抗C5抗体薬エクリズマブでは1,000~2,000倍になると推定されている2)。エクリズマブが上市され7年が経過し,同薬剤を投与された発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者も700名を超えている3)。これまでの本邦におけるIMDの年間発生数は40件程度であり4),われわれが日常診療で遭遇する機会はまれだと思われるが,エクリズマブによる二次性の補体欠損により感染ハイリスク患者が確実に増加しつつあり,あらためてIMD対策に関心が集まっている。そこで本コラムでは,最近のIMD発生動向や感染予防の現状について,補体欠損との関連性に着目してまとめてみた。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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