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Onco-Cardio-Coagulation

がん自体による血栓形成のメカニズム

窓岩清治

Cardio-Coagulation Vol.6 No.4, 42-48, 2019

がんは血小板-血液凝固系-線溶系を巧みに利用することにより増殖し,浸潤,転移する。がんの進展に伴う止血機構の破綻は,宿主に血栓症をもたらす。Japan VTE Treatment Registry(JAVA)において,がんは静脈血栓塞栓症(VTE)の危険因子の27%を占め,最も高いことが示されている1)。また,がん患者におけるVTEの発症率は1~8%/年とされ,非がん患者の約4~7倍も高い2)3)。一方で,VTEの頻度はがん種や組織型により異なる4)。脳腫瘍や膵がん,胃がん,肺がんはいずれも10~40%と高頻度にVTEを合併するが,乳がんや大腸がん,頭頸部がんのVTE発症頻度は比較的低い5)6)。がんの病期とVTEとの関連性は高く,遠隔転移をきたした進行期のがん患者のVTE合併率は初期のがん患者と比較して2~3倍も高い7)。さらに,“active cancer”すなわちがんの診断後1年以内や症候性の肺動脈血栓症の罹患後6ヵ月以内,あるいは原発巣が残存する場合や転移巣をもつ患者では,VTEの再発リスクが非がん患者と比較して約3倍高い8)9)。また,VTEを合併したがん患者の死亡率はVTEを併発しない患者と比較して約2倍高いことが報告されている7)。このように,がん診療のうえでVTEは,患者の生命予後を規定しうる重要な合併症のひとつである。
近年,がん患者を診療する機会が増えつつある循環器内科医にとって,がんが血栓症を引き起こす基本的な機序を理解することは有用である。本稿では,特にがん自体がもたらす止血システムの破綻と血栓形成について概説する。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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