特集 アンチエイジングから血栓症を考える
2. 血栓症予防を見据えた糖代謝管理
Anti-aging Science Vol.5 No.1, 17-20, 2013
「I はじめに」糖尿病, 高血圧, 脂質代謝異常などの動脈硬化性疾患の危険因子は, しばしば重積し相乗的に作用して, 心血管イベントの発症リスクを高めることが知られている. 生活習慣病のなかでも糖尿病患者の蔓延は世界的な傾向であり, 2009年度の糖尿病実態調査でも, わが国には予備軍まで含めて推定2,800万人の糖尿病患者が存在することが明らかにされている. これに伴い, 大小血管合併症を抱えた患者数も激増の一途を辿っているのが現状である. 実際, 糖尿病患者では, 動脈硬化症の進展が非糖尿病患者に比べて約15年早く, 3割の方が心筋梗塞や脳血管障害などの心血管系の事故が原因で死亡している. 血栓症は, 急性冠症候群やブレインアタックの発症に関わるだけでなく, 網膜症や腎症などの細小血管合併症の進展, 増悪にも寄与している. 本稿では, 糖尿病における血管障害や血栓傾向に及ぼす終末糖化産物(advanced glycation end products, 以下AGE)とその受容体(receptor for AGE, 以下RAGE)の役割について解説するとともに, 血栓症予防を見据えた糖代謝管理や新しい治療戦略について言及する.
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