Theme 新しいがん治療のState of the Art Cancer biology and new seeds
解糖系が亢進した腫瘍微小環境における制御性T細胞
がん分子標的治療 Vol.20 No.1, 102-105, 2022
免疫チェックポイント阻害薬はさまざまながん種に適応が拡大された。一方で奏効しない症例も存在し,患者層別化や新規併用療法の開発が急務である。これまでわれわれは,制御性T細胞(Treg)におけるPD-1分子の高発現がPD-1/PD-L1経路阻害薬に対する治療抵抗性因子であることを明らかにしてきた。さらに,CD8⁺T細胞は高乳酸環境下では解糖系によるエネルギー生成が阻害されて抗腫瘍活性が低下する一方で,Tregは高乳酸環境下で乳酸を代謝することが可能であり,その結果としてPD-1発現が亢進し免疫抑制機能が増強されることを見出した。よって,肝転移のような高乳酸環境の腫瘍においては,乳酸を代謝したTregがPD-1分子を高発現していることが治療抵抗性の要因となっている。解糖系が高まった腫瘍において,乳酸代謝を阻害することで治療抵抗性を改善するなど,代謝に注目した新たながん免疫療法への展開が期待される。
「KEY WORDS」解糖系,乳酸,CD8⁺T細胞,制御性T細胞,PD-1
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。