Theme 新しいドラッグデリバリーシステムによる抗悪性腫瘍薬 Learn more from previous clinical trial
MSI-High進行大腸がんに対するペムブロリズマブの投与(KEYNOTE-177試験)
がん分子標的治療 Vol.19 No.2, 113-116, 2022
細胞自体は,分裂する際のDNAの恒常性を維持するために,複製時に生じる核酸塩基対のエラー(ミスマッチ)を修復する(mismatch repair;MMR)機能をもっている。MMR機能が低下している状態をMMR deficient(dMMR),機能が保たれている状態をMMR proficient(pMMR)と表現する。この機能が欠損すると遺伝子内の繰り返し配列(マイクロサテライト配列)に複製時のエラーが残る。したがって,その領域をPCRなどで増幅して繰り返し配列の反復回数の差を検出することをマイクロサテライト不安定性(MSI)検査といい反復回数異常が多いものをMSI-highと規定している。
この機能が欠損した大腸がんは15%ほどで,12%が散発性で多くの場合MLH1遺伝子のプロモーター領域のメチル化が原因であり,一方3%が遺伝性である。これらの腫瘍は,従来の抗がん剤の効果が乏しいとされているが,現時点ではMSI-High大腸がんであっても従来の抗がん剤が推奨されている。
MSI-High大腸がんは,腫瘍細胞内に遺伝子変異が蓄積されることに伴うネオアンチゲンが多いことから,免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されており,二次治療以降で日本でも標準治療のオプションとしてペムブロリズマブ,ニボルマブ,ニボルマブ+イピリムマブが推奨されている1)。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。