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Theme 固形がんに対する免疫療法と分子標的治療の進歩 Cancer biology and new seeds

MAPKシグナル経路を標的とする分子標的治療

衣斐寛倫

がん分子標的治療 Vol.18 No.2, 69-74, 2020

RAS-RAF-MEK-ERKシグナル(以下,MAPKシグナル)は,腫瘍の生存・増殖に密接に関わるシグナル伝達系であり,がんの約40%において異常を認める。このうちKRAS変異は最も頻度の高いドライバー遺伝子異常である。変異KRASに対する直接阻害薬の開発は難航していたが,最近KRASG12Cに対する直接阻害薬が開発され,早期臨床試験で有望な結果を示している。また,BRAF変異腫瘍は,変異部位やBRAFキナーゼ活性から3種類のサブタイプに分類され,それぞれの変異に対する個別化治療の開発が進んでいる。その一方で,MAPKシグナルには,活性を一定に保つよう複雑なフィードバック機構が存在する。KRASやBRAFの阻害薬はMAPKシグナルを抑制するが,同時にフィードバック機構を誘導するためMAPKシグナルを再活性化する。MAPKシグナルの不十分な抑制は,治療抵抗性につながるため,MAPKシグナルの制御機構を理解し,治療につなげる試みが続けられている。
「KEY WORDS」KRAS,BRAF,直接阻害薬,フィードバック機構

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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