Pharmacogenomics and biomarker
ER mutation/ctDNA
がん分子標的治療 Vol.17 No.1, 77-81, 2019
ESR1遺伝子突然変異は,近年の遺伝子シーケンシング技術の発展に伴い明らかになった重要なホルモン療法耐性化機序の1つである。アロマターゼ阻害薬への曝露によって生じたESR1遺伝子突然変異を有する乳がん細胞は,その他のホルモン療法に対しても耐性を獲得する。ESR1遺伝子突然変異は,腫瘍内のDNAだけでなく,近年リキッドバイオプシーとして発展が目覚ましい血液内に循環している腫瘍由来のDNA,すなわち血中循環腫瘍DNA(ctDNA)でもその存在が確認され,複数の施設においてctDNA内のESR1遺伝子突然変異の検出が臨床的に有用であることが証明された。現在,このESR1遺伝子突然変異を乳がんにおけるホルモン療法耐性化の代替バイオマーカーとし,それと次々と登場する新規薬剤との関係性が大規模臨床試験において検証されているところである。今や代表的なホルモン療法耐性化機序となったESR1遺伝子突然変異について,その理解を深めるために本稿で概説する。
「KEY WORDS」ESR1遺伝子突然変異,血中循環腫瘍DNA,ER陽性乳がん,ホルモン療法耐性,リキッドバイオプシー
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