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Cancer biology and new seeds

がん免疫療法とネオアンチゲン

唐崎隆弘垣見和宏

がん分子標的治療 Vol.15 No.2, 72-76, 2017

抗腫瘍免疫応答の重要性は早くから認識されており,それを治療に活用していち早く臨床的な成果を得たのが1980年代後半以降に開発された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法である。しかしながら,当時がん免疫療法は,悪性黒色腫などの例外的な一部の腫瘍に対してのみ有効な治療であるという認識であった。その後,免疫チェックポイント阻害薬が肺がんなどの固形がんに対しても有効性を示したことにより,生体の抗腫瘍免疫応答の力が再認識され,多くの臨床医ががん免疫療法に注目するきっかけになった。2000年代以降のゲノム解析技術とバイオインフォマティクスの進歩に後押しされながら,がん免疫およびがん抗原の研究も大きな飛躍を遂げた。TIL療法や免疫チェックポイント阻害薬の奏効例の解析から,抗腫瘍効果を担う免疫応答が認識する抗原は,患者固有の遺伝子変異に由来するネオアンチゲンであることが明らかになった。現在世界中でネオアンチゲンを標的としたがん免疫療法の開発が進められているが,このようながん免疫研究の歴史をふまえたとき,ネオアンチゲンは過去の免疫療法とこれからの免疫療法をつなぐ鍵ともいえる。本稿ではこのようながん免疫療法の歴史を紐解きながら,近年注目されているネオアンチゲンについて概説する。
「KEY WORDS」ネオアンチゲン,がん抗原,腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法,免疫チェックポイント阻害薬

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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