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Cancer biology and new seeds

免疫チェックポイント阻害薬と抗体医薬の併用

Combination of immune checkpoint inhibitors and monoclonal antibody therapy

小澤雄一

がん分子標的治療 Vol.14 No.2, 53-57, 2016

「SUMMARY」がん表面抗原を標的とする抗体医薬(がん標的抗体),特に免疫グロブリンG(IgG)1型の抗体では抗体依存性細胞傷害(ADCC)がその抗腫瘍効果において重要な役割を担うが,このADCCはがん細胞の直接破壊のみでなく,NK細胞と樹状細胞との相互刺激や免疫複合体の形成を通して,抗原特異的T細胞の誘導を促進する獲得免疫への橋渡し的な役割があり,「ワクチン効果」とも呼ばれる。担がん患者ではNK細胞や一部の樹状細胞でPD-1の発現が増強しており,抗PD-1抗体はPD-1を高発現したNK細胞の細胞傷害能や樹状細胞の抗原提示能を増強することが示唆されている。抗PD-1抗体とがん標的抗体の併用は,ADCC活性およびT細胞誘導の増強,そして誘導されたT細胞による腫瘍傷害の増強へと相乗的に作用する可能性が考えられる。また,このような機序は,がんに過剰発現している蛋白に応じて抗PD-1抗体の併用相手を選択する「個別化免疫療法」にもつながる可能性があり,今後期待される。
「KEY WORDS」免疫チェックポイント阻害薬,抗PD-1抗体,抗体依存性細胞傷害(ADCC),抗体医薬,ワクチン効果

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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